上告審において訴訟引受の申立は許されない。
上告審における訴訟引受申立の許否。
民訴法74条
判旨
債権が差し押さえられ、取立命令が送達された後に第三債務者と債務者との間でなされた相殺契約は、差押債権者に対抗することができない。
問題の所在(論点)
債権の差押及び取立命令が送達された後に、第三債務者と債務者との間で締結された相殺契約の効果を、差押債権者に対抗することができるか。すなわち、相殺の有効性が差押後の合意に基づく場合に制限されるかどうかが問題となる。
規範
債権の差押命令及び取立命令が第三債務者に送達された後は、差押の処分禁止効により、第三債務者が債務者との間の合意(相殺契約)によって債権を消滅させたとしても、これをもって差押債権者に対抗することはできない。民法511条の趣旨に鑑み、差押後の新たな原因に基づく債権消滅行為は制限されるべきである。
重要事実
上告人(第三債務者)は、訴外D(債務者)に対する債権を自働債権とし、Dが上告人に対して有する債権を受働債権として相殺契約を締結した。しかし、この相殺契約がなされた時期は、被上告人(差押債権者)による本件債権差押及び取立命令が上告人に送達された昭和33年6月15日以後であった。上告人は、相殺契約は送達前の昭和32年5月末になされたものであると主張して争った。
あてはめ
本件において、原審の認定によれば、上告人と債務者Dとの間の相殺契約は、本件債権差押及び取立命令が上告人に送達された後になされている。差押命令の送達により、第三債務者は債務者への弁済その他の債権消滅行為を禁止される。送達後に成立した相殺契約は、差押によって発生した差押債権者の法的地位を害するものであるから、差押債権者である被上告人に対してその効力を主張することはできない。上告人が主張する「送達前の契約成立」という事実は認められない。
結論
差押及び取立命令の送達後になされた相殺契約をもって、差押債権者に対抗することはできない。したがって、上告人の請求は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、民法511条が定める差押と相殺の優劣関係において、相殺の基礎となる合意が「差押後」になされた場合には、当然に差押債権者が優先することを再確認するものである。答案上では、差押の処分禁止効(民事執行法145条1項、民法511条)を論じる際、相殺の意思表示のみならず、その原因となる契約自体の前後関係を確定させる根拠として利用する。
事件番号: 昭和60(オ)977 / 裁判年月日: 昭和63年7月15日 / 結論: 棄却
抵当権者が物上代位権の行使として債務者の有する債権を差し押さえても、被差押債権の消滅時効は中断されない。