抵当権者が物上代位権の行使として債務者の有する債権を差し押さえても、被差押債権の消滅時効は中断されない。
物上代位権の行使としての債権差押えと被差押債権の消滅時効中断の有無
民法147条2号,民法304条,民法372条,民事執行法145条,民事執行法193条
判旨
債権者が債務者の有する第三者に対する債権を差し押さえたとしても、当該被差押債権自体の消滅時効は中断(更新)されない。
問題の所在(論点)
債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえた場合、その「被差押債権」自体の消滅時効は中断(更新)されるか(旧民法147条2号、現行民法148条1項等の解釈)。
規範
消滅時効の中断(現行法の時効の更新)事由としての「差押え」は、時効の利益を受けるべき者に対してなされる必要がある。債権差押えは、差押債権者が自己の債権を保全するために、債務者の第三債務者に対する債権の処分を禁止する手続であり、被差押債権の権利行使そのものとは評価できない。
重要事実
上告人は、訴外人物が被上告人(保険会社)に対して有する火災保険金請求権を差し押さえるべく、裁判所から差押命令を得た。その後、当該火災保険金請求権の消滅時効の成否が争点となった事案である。
あてはめ
本件において上告人が得たのは火災保険金請求権に対する差押命令である。この差押えは、上告人と債務者との間の債権回収手続にすぎず、債務者と被上告人(第三債務者)との間の火災保険金請求権そのものを権利行使したものではない。したがって、被差押債権につき時効中断の効力を生じさせる「権利の実行」には当たらないといえる。
結論
債権差押命令を得たとしても、被差押債権の消滅時効は中断されない。
実務上の射程
本判決は、差押債権者が時効中断を確実にするためには、代位行使や取立訴訟の提起など、被差押債権自体の権利行使が必要であることを示唆する。答案上は、物上代位や債権差し押さえにおける被差押債権の時効管理の論点で引用すべき重要な規範である。
事件番号: 昭和37(オ)301 / 裁判年月日: 昭和37年10月12日 / 結論: 棄却
上告審において訴訟引受の申立は許されない。