一 不動産競売手続において執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求は、差押えに準ずるものとして、配当要求に係る債権につき時効中断の効力を生ずる。 二 執行力のある債務名義の正本を有する債権者が配当要求をした後に、不動産競売の申立債権者が追加の手続費用を納付しなかったことを理由に競売手続が取り消された場合において、適法な配当要求が維持されていたときは、右の配当要求による時効中断の効力は、取消決定が確定する時まで継続する。
一 不動産競売手続において執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求と時効の中断 二 執行力のある債務名義の正本を有する債権者が配当要求をした後に不動産競売の申立債権者が追加の手続費用を納付しなかったことを理由に競売手続が取り消された場合における右配当要求による時効中断の効力
民法147条2号,民法154条,民事執行法14条民事執行法51条1項,
判旨
債務名義を有する債権者が行う配当要求は差押えに準じ時効中断効を有する。競売手続が申立債権者の費用不納付により取り消された場合でも、時効中断効は遡及的に消滅せず、取消決定確定時まで継続する。
問題の所在(論点)
不動産競売手続における債務名義に基づく配当要求に時効中断効が認められるか。また、申立債権者の費用不納付により競売手続が取り消された場合、配当要求による時効中断効は遡及的に消滅するか(旧民法154条の適用の有無)。
規範
1. 執行力のある債務名義の正本を有する債権者がする配当要求は、民法147条2号(旧法)の差押えに準ずるものとして、消滅時効を中断する効力を生ずる。 2. 配当要求後に、申立債権者の追加手続費用不納付により競売手続が取り消された場合、適法な配当要求が維持されていたときは、当該中断効は取消決定確定時まで継続する。この場合、民法154条(旧法)は準用されず、中断効は遡及的に消滅しない。
重要事実
債務名義を有する債権者(被上告人)が、他の債権者の申立てにより実施されていた不動産競売手続において適法な配当要求を行った。しかし、その後、競売の申立債権者が追加の手続費用を納付しなかったため、競売手続を取り消す旨の決定がなされ、確定した。債務者(上告人)側は、競売手続の取消しに伴い配当要求の効力も失われるため、民法154条に基づき時効中断の効力も遡及的に消滅したと主張して、時効の成立を争った。
あてはめ
1. 配当要求は、債務名義に基づき能動的に権利を実現しようとする点で強制競売の申立てと異ならないため、差押えに準ずる中断効が認められる。 2. 費用不納付による取消しの場合、配当要求自体が不適法となったわけではなく、配当要求債権者が権利行使の意思を放棄したわけでもない。したがって、民法154条の「差押えが…取り消されたとき」に当たると解して中断効を遡及的に消滅させるのは相当ではない。ゆえに、取消決定確定時までは権利行使の継続が認められ、中断効は維持される。
結論
本件配当要求による時効中断効は遡及的に消滅せず、競売手続の取消決定が確定した時まで継続する。したがって、債権の消滅時効は完成していない。
実務上の射程
本判決は、他人が開始した競売手続に乗じる配当要求であっても、債務名義がある場合は自ら差し押さえたのと同様の強力な時効中断効を認める。また、手続の中断・取消しが配当要求債権者の責めに帰さない事由(申立人の費用不納付等)による場合は、中断効を維持させることで債権者の信頼を保護しており、時効完成猶予の範囲を画定する実務上の指針となる。
事件番号: 平成17(受)1594 / 裁判年月日: 平成18年11月14日 / 結論: 破棄自判
債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条所定の通知が…