第三者の申立てに係る不動産競売手続において、抵当権者が、債権の届出をし、その届出に係る債権の一部に対する配当を受けたとしても、右配当を受けたことは、右債権の残部について、差押えその他の消滅時効の中断事由に該当せず、これに準ずる消滅時効中断の効力も有しない。
第三者の申立てに係る不動産競売手続において抵当権者が債権の一部に対する配当を受けたことと右債権の残部についての時効の中断
民法147条,民事執行法50条,民事執行法84条1項
判旨
第三者の申立てによる競売手続において、登記のある抵当権者が債権届出を行い、配当の一部を受けたとしても、その債権の残部について消滅時効中断の効力(民法147条2号等)は生じない。
問題の所在(論点)
第三者が申し立てた不動産競売手続において、抵当権者が「債権の届出」をし、かつ「配当の一部を受けた」ことが、被担保債権の残部について民法147条(当時の規定)所定の消滅時効中断事由に該当するか。
規範
1. 担保権者が自ら競売を申し立てた場合は、競売開始決定が債務者に送達されることが予定されているため、被担保債権について消滅時効中断の効力を生ずる。 2. しかし、第三者の申立てに係る競売手続における債権届出は、裁判所への資料提供を目的とするものであり、債務者への通知も予定されていないため、裁判上の請求や破産手続参加等に準ずる時効中断事由には該当しない。 3. 配当の実施も債権の存否や額を公に確定する手続ではないため、配当を受けたことが債権残部の差押え等に準ずる中断効を有することはない。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者の各借入債務を保証し代位弁済したことで求償権を取得し、併せて本件不動産上の抵当権等も承継した。その後、第三者の申立てにより本件不動産の競売が開始された。被上告人は、執行裁判所に対し求償権を被担保債権として債権届出を行い、配当期日に一部の配当を受けた。しかし、被上告人が保証人(上告人)に対し連帯保証債務の履行を求めて提訴した際、上告人は求償権が5年の経過により時効消滅したと主張して争った。
あてはめ
まず、債権届出は執行裁判所に対する資料提供に過ぎず、債務者に権利主張が到達する手続ではないため、これ自体に時効中断の効力は認められない。次に、配当表の作成・実施手続も、債権の存否や具体的額を公に確定するものではなく、抵当権者が一部配当を受けたとしても、そのことが債権の全部の存在を公認したことにはならない。また、配当期日の債務者呼出しは異議申出の機会付与に過ぎず、債権者が債務者に対して権利を主張したものとはいえない。したがって、本件において被上告人が債権届出及び一部配当を受けた事実は、時効中断事由である「差押」や「裁判上の請求」等に準ずるものとは解されない。
結論
第三者の申立てによる競売手続での債権届出及び一部配当受領は、時効中断の効力を有しない。本件各求償権は時効消滅しており、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
自ら競売を申し立てた場合(民法147条4号の「差押え」に該当)と、他人の申立てに乗じて債権届出・配当受領をした場合とで時効中断の成否が分かれる点を明確に区別する。答案上は、時効中断事由の「権利の上に眠らない」「権利主張の到達」という趣旨に照らし、手続的性質から否定的に論じる際に用いる。
事件番号: 平成3(オ)1493 / 裁判年月日: 平成7年3月23日 / 結論: 破棄差戻
一 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、保証人が、債権調査期日終了後に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときは、右弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効は、右求償権の全部について右届出名義の変更の時から破産手続の終了に至るまで中断…