一 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、保証人が、債権調査期日終了後に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときは、右弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効は、右求償権の全部について右届出名義の変更の時から破産手続の終了に至るまで中断する。 二 主たる債務者の破産手続の債権調査期日において債権者の届出債権につき破産管財人、破産債権者及び破産者に異議がなく、保証人が、その後に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときであっても、右弁済により保証人が取得した求償権の消滅時効期間は、民法一七四条ノ二第一項により一〇年に変更されるものではない。
一 主たる債務者の破産手続の債権調査期日終了後に債権全額を弁済した保証人が債権の届出名義の変更の申出をした場合における右保証人の求償権の消滅時効の中断 二 主たる債務者の破産手続の債権調査期日において債権者の届出債権につき異議がなく保証人がその後に債権全額を弁済した場合における求償権の消滅時効期間
民法147条,民法152条,民法501条,民法174条ノ2第1項,破産法26条2項,破産法240条1項,破産法287条1項
判旨
保証人が主債務者の破産手続において届出名義の変更をした場合、求償権の消滅時効は中断するが、その時効期間は民法174条の2第1項(現169条1項)による10年への延長は認められない。
問題の所在(論点)
保証人が破産手続において代位した債権の届出名義を変更した場合、①保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効は中断するか、②その時効期間は「確定判決と同一の効力を有するもの」として10年に延長されるか。
規範
1. 債権者が破産手続で債権届出をした後、保証人が全額弁済し届出名義の変更を申し出た場合、求償権を確保する目的で代位取得した債権の行使は、求償権自体の権利行使と評価でき、求償権の消滅時効は中断する。2. しかし、当該手続において求償権自体の存在・内容を確定する手続はとられていないため、確定判決と同一の効力(民法174条の2第1項、現169条1項)は及ばず、時効期間は10年に延長されない。
重要事実
債権者Dは、主債務者であるE社・F社(その後破産)に対する貸付債権を破産手続で届け出た。保証人(被上告人)は、Dに全額代位弁済した上で、破産裁判所に対し届出名義の変更を申し出た。その後、被上告人は求償権の連帯保証人(上告人)に対し、保証債務の履行を求めて提訴した。上告人は、求償権が商事時効(5年)により消滅したと主張して争った。
あてはめ
①被上告人が行った届出名義の変更は、求償権の満足を得ようとする権利行使と評価できるため、変更申出時から破産手続終了まで求償権の時効は中断する。②一方で、破産債権表の記載に確定判決と同一の効力が認められるのは、債権調査を経て内容が確定される点に根拠がある。本件の求償権は債権調査期日後に発生したものであり、その存在を確定する手続を経ていない。したがって、時効期間は10年に延長されず、破産手続終了時から本来の時効期間(5年)が進行する。
結論
求償権の時効は名義変更により中断するが、期間は10年に延長されない。破産手続終了から5年の経過により時効が完成する可能性があるため、破産手続終了時期を審理させるべく原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
破産手続中の代位弁済と名義変更による時効中断の効力を認める一方で、安易に10年の長期時効への変更を認めない実務上の限定を示した。答案上は、時効中断(更新)の有無と、その後の時効期間の長さ(延長の可否)を分けて論じる際の指標となる。
事件番号: 平成4(オ)2107 / 裁判年月日: 平成8年3月28日 / 結論: 破棄自判
第三者の申立てに係る不動産競売手続において、抵当権者が、債権の届出をし、その届出に係る債権の一部に対する配当を受けたとしても、右配当を受けたことは、右債権の残部について、差押えその他の消滅時効の中断事由に該当せず、これに準ずる消滅時効中断の効力も有しない。