主債務者である破産者が免責決定を受けた場合に、免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することができない。
破産免責の効力の及ぶ債務の保証人とその債権の消滅時効の援用
民法145条,民法166条1項,民法446条,破産法366条ノ12,破産法366条ノ13
判旨
破産者が免責決定を受けた場合、免責の効力が及ぶ債務の保証人は、主債務の消滅時効を援用することはできない。なぜなら、免責により債権者は訴えをもって履行を請求できなくなり、消滅時効の進行を観念し得なくなるからである。
問題の所在(論点)
主債務者が免責決定を受けた場合、その保証人は、免責された主債務の消滅時効を援用し、付随性に基づいて保証債務の消滅を主張することができるか。また、同一債権について勝訴判決が確定している場合の訴えの利益が問われた。
規範
免責決定の効力を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求し、その強制的実現を図ることができなくなる。したがって、当該債権については、民法166条1項に定める「権利を行使することができる時」を起算点とする消滅時効の進行を観念することができない。それゆえ、免責決定の効力が及ぶ債務の保証人は、当該主債務の消滅時効を援用することはできない。
重要事実
商人GはH銀行等から借入れを行い、上告人(信用保証協会)がその信用保証をした。被上告人は、Gが上告人に対して負担する求償債務を連帯保証した。その後、Gは免責決定を受け、当該決定は確定した。上告人は、被上告人に対し保証債務の履行を求めて提訴し、勝訴判決を得て確定した。上告人は、主債務(求償債務)の商事消滅時効の中断を目的として、同一の保証債務の履行を求める本件訴訟を提起した。
あてはめ
本件では、主債務者Gの免責決定が確定しており、上告人は主債務である求償債権について訴えをもって履行を請求し強制的実現を図ることができなくなっている。この場合、主債務の消滅時効の進行自体が観念できないため、連帯保証人である被上告人が主債務の消滅時効を援用する余地はない。そうすると、既に保証債務の勝訴確定判決を得ている上告人が、時効中断を目的として再度同一の訴えを提起する必要性は認められない。
結論
免責決定の効力が及ぶ債務の保証人は、主債務の消滅時効を援用できない。既に確定判決を得ている本件訴えは、時効中断の必要がなく訴えの利益を欠くため、却下されるべきである。
実務上の射程
保証人の独自の中断事由がない場合、主債務が免責されると保証債務のみが独自の時効にかかることになるが、既に保証債務について確定判決がある場合、その時効期間は10年となる(民法174条の2第1項)。本判例によれば、主債務の時効を理由とする保証債務の消滅は主張できなくなるため、時効中断目的の再提訴(いわゆる「時効延長の訴え」)の要否を判断する際の基準となる。
事件番号: 平成13(受)751 / 裁判年月日: 平成15年3月14日 / 結論: 破棄差戻
破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人は,主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張してこれを援用することはできない。