主たる債務者から委託を受けた保証人が、主たる債務者に対し、民法四五九条一項前段若しくは同法四六〇条の規定又は主たる債務者との合意に基づき、いわゆる事前求償権を取得した場合であつても、右保証人が弁済その他自己の出捐をもつて主たる債務を消滅させるべき行為をしたことにより同法四五九条一項後段の規定に基づいて取得する求償権の消滅時効は、右行為をした時から進行するものと解すべきである。
主たる債務者に対しいわゆる事前求償権を取得した保証人が主たる債務の弁済等により取得する求償権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法459条1項,民法460条
判旨
委託を受けた保証人の事後求償権の消滅時効は、事前求償権の発生・行使可能性にかかわらず、免責行為をした時から進行する。事前求償権と事後求償権は、発生要件や抗弁、消滅原因を異にする別個の権利であるため、両者の消滅時効は独立して進行する。
問題の所在(論点)
委託を受けた保証人が、免責行為前に事前求償権(民法460条各号所定の事由等に基づく権利)を取得し行使可能であった場合、その後に発生した事後求償権(民法459条1項)の消滅時効の起算点に影響を及ぼすか。両権利の同一性及び消滅時効の独立性が問題となる。
規範
委託を受けた保証人が民法459条1項後段に基づき取得する事後求償権の消滅時効は、保証人が弁済その他自己の出捐をもって主たる債務を消滅させるべき行為(免責行為)をした時から進行する。事前求償権(民法460条等)を取得し、これを行使し得たとしても、事後求償権の消滅時効の起算点には影響しない。なぜなら、両者は発生要件が異なり、事前求償権には事後求償権にない抗弁(民法461条)や消滅原因が規定されているなど、別個かつ異なる法的性質を有する権利だからである。
重要事実
委託を受けた保証人である上告人らが、主たる債務者に対して事後求償権を行使した。これに対し、債務者側は、免責行為に先立って事前求償権が発生し行使可能であった時点から、事後求償権も含めた求償権全体の消滅時効が進行していると主張し、時効による消滅を争った。
あてはめ
事後求償権は「免責行為」をした時に初めて発生し、行使が可能となる権利である。一方、事前求償権は免責行為前の一定の事由により発生するもので、発生要件が明確に異なる。また、事前求償権には供託や担保提供による抗弁(民法461条)が認められる等の特殊性がある。したがって、事前求償権を行使できる状態にあるからといって、未だ発生していない事後求償権を行使できる状態にあるとはいえない。ゆえに、事後求償権の時効は、事前求償権の状態に関わらず、実際の免責行為時から進行すると解するのが論理的である。
結論
事後求償権の消滅時効は免責行為時から進行する。事前求償権の取得・行使可能性は、事後求償権の消滅時効の進行を早めるものではない。
実務上の射程
保証人の求償権に関する基本判例である。答案上は、時効の起算点(「権利を行使することができる時」)の解釈において、権利の性質や発生要件の差異を強調し、各権利が独立して消滅時効にかかることを論じる際に用いる。また、民法459条と460条の関係性を整理する際の理論的根拠としても重要である。
事件番号: 平成24(受)1831 / 裁判年月日: 平成27年2月17日 / 結論: 棄却
事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有する。