事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有する。
事前求償権を被保全債権とする仮差押えと事後求償権の消滅時効の中断
民法147条2号,民法154条,民法459条1項,民法460条
判旨
委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権として行った仮差押えは、事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有する。事前求償権は事後求償権を確保するための権利であり、仮差押えの実施は事後求償権についても権利行使と同等に評価できるためである。
問題の所在(論点)
事前求償権を被保全債権とする仮差押えが、事後求償権の消滅時効を中断させる効力を有するか。別個の権利であることを理由に、各別に時効中断措置を講じる必要があるかが問題となる。
規範
事前求償権と事後求償権は別個の権利であるが、前者は後者を確保するために認められた権利であるという密接な関係にある。したがって、委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをしたときは、事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができ、民法上の時効中断(現行法における更新・完成猶予)の効力が事後求償権にも及ぶと解するのが相当である。
重要事実
債務者Y1は銀行との貸越契約に際し、保証人X(被上告人)と信用保証委託契約を締結し、Y2がこれを連帯保証した。Y1の支払延滞を受け、Xは代位弁済に先立ち、Y1所有の不動産に対し、事前求償権を被保全債権とする仮差押えを実施した。その後、Xは銀行に代位弁済を行い事後求償権を取得。仮差押えから約16年が経過した後に、XはYらに対し事後求償権に基づく支払いを求め本件訴訟を提起した。これに対しYらは、事後求償権は消滅時効にかかっていると主張した。
あてはめ
本件において、Xが行った仮差押えは事前求償権を被保全債権とするものであるが、事前求償権は将来発生すべき事後求償権の確実な行使を目的とする権利である。このような両権利の実質的関連性に鑑みれば、事前求償権に基づく仮差押えの実行は、事後求償権についても実質的な権利行使の意思を表明したものといえる。また、代位弁済後に改めて事後求償権について時効中断措置を要求することは、債権者の合理的な期待に反し、法的な負担を不当に強いるものである。したがって、Xの仮差押えにより、事後求償権の消滅時効も中断されたと評価される。
結論
事前求償権を被保全債権とする仮差押えにより事後求償権の消滅時効は中断される。したがって、Yらの消滅時効の主張は認められず、Xの求償金請求は認容される。
実務上の射程
保証人の求償権に関する標準的な判例であり、事前・事後の権利の峻別と密接性を論じる際の規範となる。答案上は、時効中断(更新)の「権利の同一性」や「権利行使の評価」が問題となる場面で、実質的な権利の連続性を強調する根拠として活用する。
事件番号: 平成17(受)1594 / 裁判年月日: 平成18年11月14日 / 結論: 破棄自判
債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条所定の通知が…