物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、あらかじめ求償権を行使することはできない。
物上保証人と求償権の事前行使の可否
民法351条,民法372条,民法460条
判旨
委託を受けた物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来したとしても、債務者に対して民法460条の類推適用による事前求償権を行使することはできない。
問題の所在(論点)
委託を受けた物上保証人は、民法460条(受託保証人の事前求償権)の類推適用により、被担保債権の弁済期到来等を理由として債務者に対し事前求償権を行使できるか。
規範
委託を受けた保証人の事前求償権に関する民法460条の規定は、委託を受けた物上保証人には類推適用されない。物上保証の委託は物権設定行為の委任にすぎず、債務負担行為の委任ではないため、抵当権の実行等による債務消滅まで求償権の存在や範囲が確定せず、弁済等を委任事務の処理と解することもできないからである。
重要事実
上告人(物上保証人)は、債務者の委託を受けて自己の所有不動産に抵当権を設定した。その後、被担保債権の弁済期が到来したため、上告人は債務者に対し、民法460条の類推適用に基づき、あらかじめ求償権を行使(事前求償)することを求めて提訴した。
あてはめ
保証の委託は受託者が自ら債務を負担する「債務負担行為」の委任であり、弁済は委任事務処理に伴う負担といえる。これに対し、物上保証の委託は「物権設定行為」の委任にすぎず、物上保証人は不動産の価額の限度で責任を負うにすぎない。また、抵当権実行による債務消滅の有無や範囲は配当時まで確定せず、これを委任事務の処理とみることもできない。したがって、事後求償における類似性(民法372条、351条)があるとしても、性質上の相違を無視して民法460条を類推適用することはできない。
結論
物上保証人による事前求償権の行使は認められない。上告人の請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
物上保証人と保証人の性質の決定的な違い(責任の限度と事務処理の性格)を明らかにした判例。答案では、物上保証人の地位を論じる際、民法351条による保証規定の準用が「事後」の求償関係に限られることを示す論拠として活用する。
事件番号: 昭和60(オ)1454 / 裁判年月日: 昭和61年12月11日 / 結論: 破棄差戻
第一審で主張されなかつた事実であつても、第一審判決事実摘示に右の事実が主張された旨記載され、控訴審の口頭弁論期日において第一審の口頭弁論の結果を陳述するに際し「第一審判決事実摘示のとおり陳述する」旨弁論した場合は、右の事実は控訴審の口頭弁論で陳述されたことになる。