連帯保証の性質を有する身元保証をした甲乙二名のうち甲のみにつき身元保証に関する法律五条に基づいて賠償額が定められ、甲がこれを弁済したのち乙に求償請求をした場合には、裁判所は、同条により乙の賠償額を定め、これと甲の賠償額との合算額が主債務額を超えるときにおいてのみ、甲の弁済額のうち、主債務額をそれぞれの賠償額に応じて按分した甲の負担部分を超える金額について、甲の請求を認容すべきである。
身元保証に関する法律五条に基づいて定められた賠償額を弁済した身元保証人から他の身元保証人に対してする求償請求を認容すべき限度
身元保証に関する法律5条,民法465条1項
判旨
複数の身元保証人がいる場合、各自の賠償限度額の合算額が主債務額を超えるときに限り、各自の賠償額の割合で按分した額を負担部分とする共同保証関係が成立し、自己の負担部分を超えて弁済した者は他の保証人に求償できる。
問題の所在(論点)
数人の身元保証人がいる場合において、一人の身元保証人が身元保証法5条に基づき減額された賠償額を弁済したとき、他の身元保証人に対して求償権(民法465条1項)を行使できるか。また、その際の負担部分の算定基準が問題となる。
規範
二人以上の身元保証人が連帯保証の性質を有する契約を締結し、裁判所が身元保証法5条を適用して各自の賠償すべき額を定めた場合、原則として各自はその額の限度で保証責任を負う。各身元保証人の賠償すべき額の合算額が主たる債務額を超えない場合は、自己の賠償額の範囲内で弁済しても他者への求償はできない。しかし、右合算額が主たる債務額を超える場合には、負担の公平を図るため、各賠償額の割合に応じて主債務額を按分した額を各自の負担部分とする共同保証関係(民法465条1項)が成立する。他の保証人に対する裁判が未だない場合でも、求償訴訟において当該保証人の賠償すべき額を審理判断した上で、同様の理により求償の可否を決定すべきである。
重要事実
Dの勤務先Eと、Dの親族である上告人及び顧客であった被上告人は、DがEに損害を与えた際の連帯身元保証契約を締結した。Dの使込みによりEに約596万円の損害が生じ、前訴で上告人のみが訴えられ、裁判所は一切の事情(身元保証法5条)を考慮して上告人の賠償額を300万円と定め、上告人は遅延損害金を含め弁済した。一方、Eは被上告人に対し責任を追及していなかった。上告人は被上告人に対し、自己の弁済額の2分の1の求償を求めて提訴した。上告人はDの親族で指導監督が容易な立場だったが、被上告人は形式的に名前を連ねたに過ぎず指導監督を期待されない立場であった。
あてはめ
上告人と被上告人の賠償すべき額を検討すると、上告人はDの親族として指導監督が容易な立場にあり、Eからもそれを期待されていた。一方、被上告人は単なる顧客であり、形式的に保証人となったに過ぎず、指導監督の立場にも意思もなかった。このような事情に鑑みれば、被上告人が賠償すべき額は上告人の額を格段に下回る。そうすると、両者の賠償すべき額の合算額は、主債務額である約596万円に達しないことが明らかである。したがって、上告人が弁済した300万円は自己の具体的保証債務の範囲内にとどまり、負担部分を超える弁済とはいえないため、被上告人に対する求償権は認められない。
結論
各身元保証人の具体的賠償額の合算が主債務額を超えない限り、共同保証人間の求償関係は生じない。本件では合算額が主債務額を超えないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
身元保証法5条による責任制限がある場合の特則を示す。実務上、身元保証人が複数いる場合の求償の可否は、まず「各自の具体的賠償額の算定(身元保証法5条)」を行い、次に「その合算額と主債務額の比較」という二段階の判断を要することを明示しており、答案上もこの順序で論じるべきである。
事件番号: 平成25(受)2001 / 裁判年月日: 平成27年11月19日 / 結論: 棄却
保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じない。