甲が、実質上の借主乙、その連帯保証人丙のために名義を貸して形式上の借主となつた等判示の事情のもとにおいて、丙は、甲に対し、民法第四六〇条第二号所定の求償権を有しない。
形式上の主債務者に対する連帯保証人の求償権が否定された事例
民法460条2号
判旨
金銭借入において、債権者との関係では主債務者とされている者であっても、関係者間の内部合意により実質的な借用主が別に存在し、当該主債務者が単に形式上の名義人にすぎない場合には、その名義人に対して委託を受けた保証人が弁済しても、当該名義人に対する求償権は発生しない。
問題の所在(論点)
債権者との関係で主債務者として契約した者が、内部関係において単なる形式上の名義人にすぎない場合、保証人は当該名義人に対して求償権(民法459条1項)を行使できるか。
規範
保証人の求償権(民法459条等)は、主債務者が実質的にも債務を負担していることを前提とする。したがって、債権者との外部的関係では主債務者の形式をとっていても、内部的な合意により実質的な債務負担者が別に存在し、当該名義人が単に形式上の主債務者にすぎない場合には、保証人は当該形式上の主債務者に対して求償権を取得しえない。
重要事実
1. Eが被上告人に対し、被上告人の名義で銀行から130万円を借り受けてほしいと申し入れ、被上告人が承諾した。 2. 被上告人を債務者(主債務者)、上告人およびEを連帯保証人とする手形取引契約が締結され、銀行から貸付がなされた。 3. 貸付金は銀行から被上告人に交付された直後、その場で被上告人から実質的借主であるEに手渡された。 4. 上告人は被上告人から委託を受けて連帯保証人となったが、内部関係ではEが主債務者、上告人がその連帯保証人であり、被上告人は形式上の名義人にすぎなかった。 5. 上告人は保証債務を履行したとして、形式上の主債務者である被上告人に対し求償を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、被上告人はEの依頼により名義を貸したにすぎず、融資実行後直ちに資金をEに交付している。上告人、被上告人およびEの三者間の内部関係に照らせば、実質的な主債務者はEであり、被上告人は単に形式上の主債務者にすぎないといえる。保証人が弁済による求償をなし得るのは、内部関係において終局的に債務を負担すべき者に対してである。本件のように被上告人が形式上の名義人にすぎない以上、上告人が被上告人に対して求償権を取得しえないことは当然の事理であると解される。
結論
被上告人は形式上の主債務者にすぎないため、上告人は被上告人に対して求償権を取得せず、請求は棄却される。
実務上の射程
名義貸しが介在する保証関係における求償権の帰属を決定する際の基準となる。答案上は、求償の相手方が「主債務者」に該当するかを判断する際、形式的な契約名義だけでなく、関係者間の内部的な合意や資金の実際の帰属といった実態を重視して判断する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和42年9月29日 / 結論: 棄却
物上保証の目的物件の第三取得者が自己の出捐をもつて債権者に対し弁済した場合において、右第三取得者が有する求償権の範囲については、物上保証人に対する債務者の委任の有無によつて、民法第四五九条ないし第四六二条の規定が準用される。