物上保証の目的物件の第三取得者が自己の出捐をもつて債権者に対し弁済した場合において、右第三取得者が有する求償権の範囲については、物上保証人に対する債務者の委任の有無によつて、民法第四五九条ないし第四六二条の規定が準用される。
物上保証の目的物件の第三取得者が弁済によつて取得する求償権の範囲
民法372条,民法351条,民法459条,民法462条
判旨
抵当権が設定された不動産の第三取得者は物上保証人と類似の地位にあるため、債権者への任意弁済により債務者に対し求償権を取得し、その範囲は物上保証人の求償権に関する規定を準用して決定される。
問題の所在(論点)
抵当不動産の第三取得者が債務者のために任意弁済をした場合、債務者に対して求償権を取得するか。また、その求償権の範囲を決定するにあたり、物上保証人の求償権に関する規定(民法351条)や保証人の求償権に関する規定(民法459条等)を準用できるか。
規範
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行により所有権を失う立場にあり、抵当物件の限度で責任を負う物上保証人と類似の地位にある。したがって、第三取得者が自己の出捐により任意弁済をした場合の求償関係については、民法372条、351条を準用する。また、その求償権の範囲については、物上保証人に対する債務者の委任の有無に応じ、保証人の求償権に関する規定(民法459条ないし462条)を準用して画定すべきである。
重要事実
債務者である上告人は、債権者Eから110万円を借り受けた。Dは、上告人からの委任に基づき、自己所有の土地に本件借入金債務を担保するための抵当権を設定した(物上保証人)。その後、被上告人はDからこの土地の所有権を譲り受けた(第三取得者)。被上告人は、債権者Eに対し上告人の債務全額を任意に弁済したため、主債務者である上告人に対し、弁済金および法定利息の求償を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、被上告人は抵当権が付着した不動産を譲り受けた第三取得者であり、物上保証人と同様の法的性質を有する地位にある。元々の物上保証人であるDは、債務者である上告人の委任に基づいて抵当権を設定していた。この場合、第三取得者である被上告人が上告人の債務全額を弁済したことは、委任を受けた保証人と同様の保護を要する行為といえる。したがって、委任を受けた保証人の求償権に関する規定(民法459条等)が準用され、被上告人は上告人に対し、弁済額および法定利息等の範囲で求償権を有する。
結論
第三取得者は債務者に対し求償権を取得する。本件では委任に基づき設定された抵当権の目的物を受領した者による弁済であるから、委任を受けた保証人の規定に基づき、弁済金および法定利息の求償が認められる。
実務上の射程
第三取得者の任意弁済による求償権の法的根拠と範囲を明示した重要判例である。答案上は、第三取得者が弁済した場合の代位(民法501条)だけでなく、独自の求償権の成否が問われた際に、本判例を根拠として物上保証人の規定を準用し、さらに委任の有無により保証人の規定(459条〜)を使い分ける流れを示すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)986 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: 棄却
甲が、実質上の借主乙、その連帯保証人丙のために名義を貸して形式上の借主となつた等判示の事情のもとにおいて、丙は、甲に対し、民法第四六〇条第二号所定の求償権を有しない。