甲が債権者に対する関係では主債務者であるが、内部関係においては実質上の主債務者乙の連帯保証人にすぎない場合において、連帯保証人丙が債権者に対し自己の負担部分をこえる額を弁済したときは、丙は、甲に対し丙の負担部分をこえる部分についてのみ甲の負担部分の範囲内で求償権を行使することができる。
債権者に対する関係では主債務者であるが内部関係においては実質上の連帯保証人にすぎない者に対する他の連帯保証人の求償権
民法465条1項,民法442条
判旨
共同保証人相互間の求償権の範囲は、債権者との対外的な契約形式にかかわらず、内部の実質的な法律関係に従って定められる。形式上は主債務者であっても実質的に連帯保証人にすぎない場合は、自己の負担部分を超える弁済をした他の保証人に対し、自己の負担部分の限度で求償に応じれば足りる。
問題の所在(論点)
債権者との対外的関係では主債務者として契約している者が、内部関係では実質的に保証人の地位にある場合、他の共同保証人からの求償の範囲は、対外的な表示(全額)と内部的な実態(負担部分)のいずれを基準に決定すべきか。民法465条1項の適用範囲が問題となる。
規範
保証人と債務者、または保証人相互間の求償権の有無および範囲は、内部の実質的な法律関係に従って定められるべきである。債権者との関係では主債務者として契約を締結した者であっても、内部関係において実質上の主債務者でない場合には、他の連帯保証人からの全額求償に対し、当然にこれに応ずべき義務を負うものではない。この場合、民法465条1項により、自己の負担部分(特約がなければ平等)を超える部分を弁済した保証人から、各人の負担部分の限度で求償を受けるにとどまる。
重要事実
実質的な債務者はDであり、上告人(形式上の主債務者)は保証人の地位にすぎず、被上告人(連帯保証人)もその事実を了知していた。被上告人は債権者に対し債務全額を弁済した後、形式上の主債務者である上告人に対し、弁済全額の求償を求めて提訴した。原審は、上告人が債権者との関係で主債務者である以上、連帯保証人である被上告人からの全額求償に応じる義務があるとして、上告人の反論(負担部分は2分の1であるとの主張)を排斥した。
あてはめ
分別の利益は対債権者の問題であり、保証人相互の内部関係には関わりがない。本件において、内部関係でDが実質上の主債務者であり、上告人が実質上の連帯保証人にすぎないという実態があるならば、求償の範囲はその実態に即して判断すべきである。そうすると、同じ連帯保証人の地位にある被上告人が弁済した場合、上告人が負うべき求償義務は、自己の負担部分(特約がなければ2分の1)を超える弁済部分について、自己の負担部分の限度で発生するにすぎない。形式上の契約名義のみを根拠に、直ちに全額の求償義務を肯定した原判決の判断は、内部関係の実態を無視した法令適用の誤りがある。
結論
共同保証人間の求償範囲は内部の実質的関係に従う。上告人が実質的に保証人の地位にあるならば、他の保証人からの求償は各自の負担部分の限度(原則平等)に制限される。原判決を破棄し、実態の審理のため差し戻す。
実務上の射程
契約書の形式(主債務者か保証人か)が実態と異なる「借名」事案において、内部的な負担割合を確定させる際のリーディングケースである。答案上は、求償権の発生要件(民法442条、465条)を論じる際、内部関係における「負担部分」は形式的な名義ではなく実質的な合意や利益帰属により定まることを示す規範として活用する。
事件番号: 昭和57(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和60年5月23日 / 結論: 棄却
連帯保証の性質を有する身元保証をした甲乙二名のうち甲のみにつき身元保証に関する法律五条に基づいて賠償額が定められ、甲がこれを弁済したのち乙に求償請求をした場合には、裁判所は、同条により乙の賠償額を定め、これと甲の賠償額との合算額が主債務額を超えるときにおいてのみ、甲の弁済額のうち、主債務額をそれぞれの賠償額に応じて按分…