債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条所定の通知がされなくても,上記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断する。
物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に保証人が代位弁済をした上で差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが承継の申出について民法155条所定の通知がされなかった場合における保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無
民法147条,民法155条,民法501条,民事執行規則171条
判旨
抵当権者が物上代位権を行使して債権を差し押さえた場合、被担保債権の消滅時効は、当該差押えの手続きが終了するまで中断(更新)し、物上代位の目的となった債権の支払等により差押手続が終了した時から再び進行を始める。
問題の所在(論点)
抵当権者が物上代位権に基づき債権を差し押さえた場合、その被担保債権の消滅時効はどの時点で中断し、いつまでその効果が継続するか(民法147条2号の適用の有無と期間)。
規範
抵当権者が物上代位権を行使して債権を差し押さえることは、民法147条2号(旧法)の「差押え」に該当し、これにより被担保債権の時効は中断する。この中断の効果は、差押手続が継続している間は持続し、配当手続等の終了により当該差押手続が終了した時から、改めて時効が進行を開始すると解するのが相当である。
重要事実
債権者Aは債務者Bに対する貸付金債権を被担保債権として、B所有の不動産に抵当権を設定した。その後、当該不動産が収用されたため、AはBが取得する補償金債権に対し物上代位権を行使して差押えを申し立てた。差押命令は第三債務者(起業者)に送達され、差押手続が開始された。Aは差押手続中に本件被担保債権の消滅時効を主張するBに対し、差押えによる時効中断を主張して争った。
あてはめ
物上代位権の行使による差押えは、抵当権者が被担保債権の満足を得るために行う公権的な権利行使である。これは民法147条2号所定の「差押え」そのものであり、債務者に対して直接の権利行使ではないとしても、抵当権という優先弁済受領権の実現プロセスとして時効中断の効力を認めるべきである。さらに、民法154条(旧法)の趣旨に照らせば、中断の効力は手続が存続する間は継続し、差押手続が終了した時点(配当等の受領時)から再び時効が進行すると解すべきである。本件では、差押手続が終了するまでの間、被担保債権の時効は完成しない。
結論
物上代位による差押えによって被担保債権の時効は中断し、その効果は差押手続が終了するまで継続する。したがって、手続継続中に時効が完成することはない。
実務上の射程
物上代位による差押えが「差押え」として時効中断(更新)事由となることを明示した。債務者自身に対する請求ではないが、抵当権行使の性質から中断の効力を認めている。答案上は、物上代位の実行が被担保債権自体の消滅時効に与える影響を論じる際に、本判例を引用して時効中断(更新)を認めるべきである。
事件番号: 平成4(オ)2107 / 裁判年月日: 平成8年3月28日 / 結論: 破棄自判
第三者の申立てに係る不動産競売手続において、抵当権者が、債権の届出をし、その届出に係る債権の一部に対する配当を受けたとしても、右配当を受けたことは、右債権の残部について、差押えその他の消滅時効の中断事由に該当せず、これに準ずる消滅時効中断の効力も有しない。