債務者に代位して債務者の権利を主張する訴を提起した債権者が、その訴訟の係属中に債務者から右権利を譲り受けたうえ、従前の訴を右権利を自己の権利として主張する訴に変更する手続をとつた場合においても、訴訟物自体には変更がないから、従前の訴の取下の効果は発生せず、その訴の提起に基づく右権利の消滅時効中断の効果も消滅しない。
債務者に代位して債務者の権利を主張する訴を提起した債権者が右権利を譲り受けたうえ従前の訴を右権利を自己の権利として主張する訴に変更する手続をとつた場合と従前の訴の提起に基づく右権利の消滅時効中断の効果
民法147条,民法149条,民法423条,民訴法232条,民訴法235条,民訴法237条
判旨
債権者代位訴訟の係属中に、代位債権者が被代位権利を譲り受けて自己の権利として主張する場合、訴訟物たる権利の同一性が認められるため、訴訟上の変更手続を経ても時効中断の効力は維持される。
問題の所在(論点)
債権者代位訴訟の係属中に代位債権者が被代位権利を譲り受け、訴えを「代位に基づく請求」から「権利譲受に基づく請求」へ変更した場合、代位訴訟の提起による時効中断の効力が持続するか。
規範
債権者代位訴訟における訴訟物と、当該権利を譲受した後に自己の権利として主張する訴訟における訴訟物は同一である。したがって、代位訴訟の係属中に権利譲渡を受けて訴えを変更した場合、実質的には訴訟追行資格の変更が生じるにすぎず、先行する代位訴訟の提起によって生じた消滅時効中断の効力は、変更後の後訴においても消滅せず維持される。
重要事実
被上告人(原告)は、民法423条に基づき訴外D(およびその相続人)に代位して、上告人(被告)に対し求償権を主張する訴訟を提起した。当該訴訟の係属中に、被上告人は訴外人らから右求償権の譲渡を受け、自己の権利として主張するよう訴えを変更した。これに対し、上告人は代位訴訟の取り下げによって時効中断の効力が消滅した旨を主張し、消滅時効の成立を争った。
あてはめ
被上告人が代位して主張していた求償権と、譲渡を受け自己の権利として主張する求償権は、その目的たる権利において同一であり、訴訟物自体に変更はない。訴訟行為の形式上、前訴を後訴に変更する手続がとられたとしても、実質的には単なる訴訟追行資格の変更にすぎない。そのため、この変更手続によって前訴の取下げと同様の効果が発生することはなく、前訴提起による時効中断の効力は妨げられないと解すべきである。
結論
債権者代位訴訟の提起による時効中断の効力は維持される。したがって、求償権の消滅時効は完成していない。
実務上の射程
代位債権者が権利を譲り受けて承継取得した場面において、訴訟物同一説を前提に、時効中断(現行法上の時効更新・完成猶予)の効力を維持させる実務上の指針となる。債権者代位訴訟と被代位権利自体の訴訟物の関係を論じる際の有力な論拠として活用できる。
事件番号: 平成17(受)1594 / 裁判年月日: 平成18年11月14日 / 結論: 破棄自判
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