指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって,当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。
指名債権譲渡の予約についての確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することの可否
民法467条2項,民法556条1項
判旨
指名債権譲渡の予約について確定日付のある証書による承諾があっても、予約完結権の行使による実際の権利移転につき改めて対抗要件を備えない限り、第三者に対抗できない。
問題の所在(論点)
指名債権譲渡の予約について確定日付のある証書により債務者の承諾がなされた場合、その後に予約が完結して発生した債権譲渡の効力を、改めて対抗要件を具備することなく第三者に対抗できるか(民法467条2項の対抗要件の成否)。
規範
民法467条が定める第三者対抗要件制度の趣旨は、債務者が債権の帰属に変更が生じた事実を認識することを通じ、その事実が債務者を介して外部に公示され得る点にある。債権譲渡の予約が通知・承諾されたとしても、債務者は将来的に帰属が変更される可能性を了知するに止まり、現実に帰属が変更された事実を認識するものではない。したがって、予約時に確定日付のある通知・承諾がなされていても、予約完結による譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。
重要事実
A社(訴外会社)は、上告人に対し預託金会員制ゴルフ会員権を有していた。A社は補助参加人との間で、債務の担保として当該会員権を譲渡する予約(本件譲渡予約)をし、上告人は確定日付のある証書によりこれを承諾した。その後、補助参加人は予約完結権を行使したが、その事実について確定日付のある証書による通知・承諾はなされなかった。その直後、被上告人(国)がA社の滞納処分として当該会員権を差し押さえ、上告人に差押通知書が送達された。補助参加人と被上告人のいずれが優先するかが争われた。
あてはめ
本件において、上告人(債務者)は本件譲渡予約について確定日付ある証書で承諾している。しかし、これは将来の帰属変更の可能性を了知したものに過ぎず、実際に予約が完結して権利が補助参加人に移転した事実を認識したものではない。補助参加人が予約完結権を行使した際、改めて確定日付のある証書による通知または承諾がなされていない以上、補助参加人は債権譲渡の効力を第三者である被上告人に対抗できない。したがって、先行する予約承諾よりも、予約完結後に正当な手続(差押え)を履践した被上告人の権利が優先される。
結論
指名債権譲渡の予約につき確定日付のある証書による承諾がなされても、予約完結による譲渡の効力については別途対抗要件を具備しない限り、第三者に対抗できない。被上告人の差押えが優先する。
実務上の射程
本判決は、譲渡予約の通知・承諾が予約完結後の譲渡の対抗要件を兼ねることを否定した。答案作成上は、民法467条2項の「通知」「承諾」は、権利移転の「事実」を対象とすべきであるという公示の観点から論じる。譲渡担保等の予約を用いる実務においては、予約完結時に改めて確定日付のある通知等を行う必要があることを示す重要な射程を有する。
事件番号: 令和3(受)1620 / 裁判年月日: 令和5年11月27日 / 結論: 破棄自判
抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできない。 (意見がある。)