甲が乙との間の特定の商品の売買取引に基づき乙に対して現に有し又は将来有することのある売掛代金債権を目的として丙との間で譲渡の予約をした場合、譲渡の目的となるべき債権は、甲の有する他の債権から識別ができる程度に特定されているということができる。
既発生債権及び将来債権を一括して目的とするいわゆる集合債権の譲渡予約において譲渡の目的となるべき債権の特定があるとされる場合
民法369条(譲渡担保)・民法466条
判旨
将来債権を含む債権譲渡予約において、譲渡目的債権が他の債権から識別できる程度に特定されており、かつ予約完結時まで債務者の処分権等が制限されないのであれば、公序良俗に反せず有効である。
問題の所在(論点)
1. 将来債権を含む債権譲渡予約において、目的債権はどの程度特定される必要があるか。 2. 広範な将来債権を目的とする譲渡予約が、債務者の営業を拘束し、又は他の債権者を害するものとして公序良俗に反するか。
規範
1. 債権譲渡予約における目的債権の特定は、予約完結時において他の債権から識別できる程度になされていれば足り、将来債権の場合も同様である。 2. 債権譲渡予約が公序良俗(民法90条)に反するか否かは、締結の経緯、予約完結までの債務者の処分権限の有無、他の債権者への影響等を総合して判断する。特に、予約完結時まで債務者が債権を自ら取り立て・処分でき、他の債権者も差し押さえ可能であれば、過度な拘束や不当な害とはいえず有効である。
重要事実
債権者Fは、仕入先である被上告人に対し多額の買掛債務を負っていた。被上告人は、Fの資金繰りを援助する一方で、追加担保として、Fが上告人ら11社に対して現に有し又は将来有することのある一切の商品売掛代金債権を対象とする債権譲渡予約(本件予約)を締結した。本件予約では、Fが支払停止等の不信用な事実が生じた場合に被上告人が予約完結権を行使できるとされていた。その後、Fの廃業に伴い被上告人が予約完結権を行使し、上告人に対し譲渡通知を行ったが、上告人は債権の特定欠如や公序良俗違反を理由に無効を主張した。
あてはめ
1. 本件予約では、第三債務者、発生原因(特定の商品売買)、及び債権の種類が明記されており、予約完結時に他の債権と識別可能であるから、特定に欠けるところはない。 2. 締結の経緯において、被上告人はFの窮状に乗じたわけではなく、むしろ継続的な援助の過程で担保を得たものである。また、予約完結の意思表示がなされるまでは、Fは自ら債権の取立て・処分が可能であり、他の債権者による差押えも妨げられない。したがって、Fの経営を過度に拘束したり、他の債権者を不当に害したりするものではない。
結論
本件予約は目的債権の特定を欠かず、公序良俗にも反しないため有効である。したがって、被上告人の請求は認められる。
実務上の射程
将来債権譲渡の有効性に関するリーディングケースである。答案では、特定具備の基準(種類・発生原因・債務者等の明示)と、公序良俗違反の判断枠組み(処分権の留保、締結の経緯)を分けて記述する。特に、予約完結型の場合は「完結時まで債務者の処分権が失われないこと」が、包括的な譲渡であっても公序良俗に反しないとする重要な評価ポイントとなる。
事件番号: 平成10(オ)331 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって,当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。