債務者による詐害行為当時債権者であつた者は、その後その債権を目的とする準消費貸借契約を締結した場合においても、右詐害行為を取り消すことができる。
旧債権発生後これを目的とする準消費貸借契約締結前にした債務者の詐害行為と債権者の取消権
民法424条,民法588条
判旨
準消費貸借の債権者は、反対の意思表示がない限り既存債務との同一性が維持されるため、準消費貸借契約締結前になされた債務者の詐害行為を取り消すことができる。
問題の所在(論点)
詐害行為取消権(民法424条1項)の行使において、被保全債権が準消費貸借によって発生した場合、当該契約締結前になされた債務者の行為を詐害行為として取り消すことができるか。準消費貸借による旧債務と新債務の同一性が問題となる。
規範
準消費貸借契約に基づく債務は、当事者の反対の意思が明らかでない限り、既存債務と同一性を維持しつつ、単に消費貸借の規定に従うこととされるにすぎないと推定される。したがって、既存債務成立後に特定債権者のためになされた債務者の行為は、詐害行為の要件を具備する限り、準消費貸借契約成立前のものであっても、詐害行為としてこれを取り消すことができる。
重要事実
債権者Aは、債務者Bに対し、昭和39年9月から昭和40年1月にかけて発生した貸金債権及び売買代金債権を有していた。Bは昭和40年2月15日に倒産したが、同月19日、他の債権者を害する意思をもって、BのCに対する請負代金債権を特定債権者Dに譲渡した(本件詐害行為)。その後、同月24日に、AとBは既存の貸金及び売買代金債権を目的とする準消費貸借契約を締結した。Aは、本件債権譲渡が準消費貸借契約前になされたものであるが、詐害行為に該当するとしてその取消しを求めた。
あてはめ
本件において、AがBに対して有していた当初の貸金債権及び売買代金債権は、準消費貸借契約締結前である昭和39年から昭和40年1月にかけて既に成立していた。準消費貸借は、特段の事情がない限り既存債務との同一性を維持するものであるから、被保全債権の成立時期は準消費貸借契約時ではなく、既存債務の成立時を基準に判断すべきである。そうすると、本件債権譲渡が行われた昭和40年2月19日の時点で、既にAの債権(既存債務)は成立していたといえる。したがって、当該譲渡行為は、準消費貸借契約より前に行われたものであっても、詐害行為取消権の対象となり得る。
結論
準消費貸借契約の成立前にされた債務者の行為であっても、既存債務成立後であれば詐害行為として取り消すことができる。
実務上の射程
被保全債権が詐害行為よりも「前」に成立している必要があるという原則に対し、準消費貸借の場合は既存債務との同一性を根拠に、形式的な契約日ではなく実質的な債権発生時を基準にできることを示した。答案上は、準消費貸借の性質(同一性の維持)を指摘した上で、被保全債権の具備を肯定する論法として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)799 / 裁判年月日: 昭和40年4月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】将来債権の譲渡契約が、将来の取引で発生する債権について譲渡の予約をなし、更生不能等の条件成就時に完結権を行使する趣旨である場合、債権発生後に譲渡の効力が生じ得る。この場合、当該譲渡行為は債務者の一般担保を減少させるものとして、詐害行為取消権の対象となり得る。 第1 事案の概要:債務者Dは、債権者で…