将来の債権を目的とする債権譲渡行為は詐害行為取消の対象とならないとした判決に審理不尽理由不備の違法があるとされた事例。
判旨
将来債権の譲渡契約が、将来の取引で発生する債権について譲渡の予約をなし、更生不能等の条件成就時に完結権を行使する趣旨である場合、債権発生後に譲渡の効力が生じ得る。この場合、当該譲渡行為は債務者の一般担保を減少させるものとして、詐害行為取消権の対象となり得る。
問題の所在(論点)
将来債権の譲渡契約において、契約時に目的債権が現実に発生していない場合、当該譲渡行為は「債務者の一般担保を減少させる行為」として詐害行為取消権(民法424条1項)の対象となるか。また、譲渡の効力発生時期をどのように判断すべきか。
規範
債権譲渡契約が、将来発生すべき債権を対象とし、かつ特定の条件(債務者の更生不能等)が成就した際に予約完結権を行使して対抗要件を具備させる趣旨である場合には、譲渡の効力発生時期は「契約時」に固定されず、債権が具体的に発生した時点以後と解される。その結果、譲渡時点で既に発生していた債権が責任財産を構成していたといえる以上、当該行為は一般債権者を害する行為(詐害行為)に該当し得る。
重要事実
債務者Dは、債権者である被上告人に対し、将来E社との取引で発生する売掛代金債権を譲渡する契約を締結した。この際、Dの更生を図るため、更生が困難になった場合にのみ被上告人がE社に通知を発送するとの合意があり、Dは通知発送まで自ら債権を取り立てていた。その後、Dの更生が不能となったため、被上告人は通知を発送して譲渡の対抗要件を備えた。原審は、譲渡契約時の昭和34年2月時点では債権が未発生であり、一般担保を構成していなかったとして詐害行為性を否定した。
あてはめ
本件契約は、単なる将来債権の確定的な譲渡ではなく、Dの更生不能を条件とする譲渡の「予約」としての実質を有する。Dは契約後も債権を取り立てており、被上告人が通知を発送した時点で初めて独占的な排他的権利を得ている。そうであれば、譲渡の効力発生は債権が具体的に発生した「後」と解する余地があり、その時点では当該債権はDの一般担保(責任財産)を構成していたといえる。したがって、契約時に債権が発生していなかったことのみをもって、直ちに詐害行為性を否定することはできない。
結論
将来債権譲渡であっても、その実質が予約完結権の行使等により効力を発生させるものである場合、債権発生後の効力発生を認めることができ、詐害行為取消権の対象となり得る。原審の判断には審理不尽・理由不備がある。
実務上の射程
将来債権譲渡の詐害行為性を検討する際、契約形式だけでなく、実質的な効力発生時期(予約完結権の有無や通知の合意等)を精査すべきことを示唆する。特に、担保目的で将来債権を譲渡させつつ債務者に取立権限を留保させるような構成をとる場合、詐害行為取消しの対象となる可能性を留意する必要がある。
事件番号: 昭和40(オ)454 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
債権発生前の行為は詐害行為にならない。