債権発生前の行為は詐害行為にならない。
債権発生前の行為と詐害行為
民法424条
判旨
債務者が行った不動産の売却行為が詐害行為に該当するためには、当該行為が債権者の債権発生後になされたものであることを要し、債権発生前になされた処分行為は詐害行為を構成しない。
問題の所在(論点)
債務者が行った不動産の売却行為が、当該行為の後に発生した債権を保全するための詐害行為取消権の対象となるか。
規範
詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには、被保全債権が詐害行為(処分行為)よりも前に発生していることが必要である。処分行為時において、その行為が債権者を害するものであるといえるためには、既に従前の債権が存在していることが論理的前提となるからである。
重要事実
債権者である上告人は、債務者である訴外持地が本件農地を被上告人へ直接売却したことが詐害行為にあたると主張した。しかし、実際には持地は第三者であるD社に対し、知事の許可を停止条件として本件農地を売り渡していた。この売買行為は、上告人が持地に対して債権を取得する前の昭和32年4月1日に行われたものであった。その後、D社からE、Eから被上告人へと買主の地位が順次譲渡された経緯がある。
あてはめ
本件における持地の売却行為は、上告人の持地に対する債権が発生するよりも前の昭和32年4月1日になされている。詐害行為取消権は、行為時に存在する債権者の共同担保を維持することを目的とする制度である。したがって、債権発生前になされた本件処分行為は、たとえその後に債権が発生したとしても、その債権者を害する詐害行為には当たらないと評価される。
結論
本件売却行為は上告人の債権発生前になされたものであるため、詐害行為にはならず、上告による取消請求は認められない。
実務上の射程
詐害行為取消権の「被保全債権の発生時期」という基本要件を確認するものである。答案上では、取消対象となる行為が債権発生「後」であることを事実関係から時系列で特定する際に、本判例の趣旨を基礎として論じるべきである。なお、農地法上の許可を停止条件とする売買であっても、その契約締結時を基準に判断している点に注意を要する。
事件番号: 昭和34(オ)433 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
既存登記義務の履行としての登記といえども、右登記義務が保全債権成立後に生じたものである場合には、詐害行為となり得る。