既存登記義務の履行としての登記といえども、右登記義務が保全債権成立後に生じたものである場合には、詐害行為となり得る。
既存登記義務の履行としての登記と詐害行為の成否
民法424条
判旨
債務者が強制執行を免れるため、特定の債権者と通謀して既存債務の弁済として不動産を譲渡した場合、その譲渡が被担保債権の成立後になされたものであるときは詐害行為に該当する。
問題の所在(論点)
既存債務の弁済としてなされた不動産の譲渡および登記移転行為が、保全債権成立後になされたものである場合、詐害行為取消権の対象となるか。
規範
既存の登記義務の履行としてなされる登記手続は原則として詐害行為とならないが、その前提となる登記義務(売買契約等)自体が、保全されるべき債権の成立後に発生したものである場合には、当該譲渡行為は詐害行為に該当し得る。
重要事実
債務者Dは、自身の債務につき強制執行を受けることを恐れ、義兄である上告人と協議。昭和31年11月9日、以前から負担していた債務の弁済として本件不動産を上告人に譲渡することに合意し、売渡証の日付を遡らせて登記手続を完了させた。しかし、この譲渡契約の締結および登記義務の発生は、被上告人(債権者)の保全債権が成立した後であった。
あてはめ
本件では、上告人と債務者Dとの間の売買契約(譲渡合意)は、被上告人の保全債権が成立した後の昭和31年11月9日に初めて締結されている。したがって、譲渡の形式が「既存債務の履行」であったとしても、その原因となる義務自体が保全債権成立後に創出されたものである以上、強制執行を免れる目的で行われた行為として詐害性が認められる。また、上告人が悪意でなかったとの立証もないため、詐害行為としての要件を充足する。
結論
本件不動産譲渡は詐害行為に該当し、取消しの対象となる。
実務上の射程
特定の債権者への代物弁済が詐害行為となるか否かの判断において、原因行為(譲渡義務の発生)が債権者の債権成立よりも前か後かを重視する。実務上は、登記の遡及などの通謀がある場合に、その実質的な合意時期を確定して詐害性を認定する際の根拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)1331 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
一 債務者が一債権者と通謀し、他の債務者を害する意思をもつて弁済をしたような場合には詐害行為になるものと解するのを相当とする。 二 訴害行為取消債権者は、他の債権者とともに弁済を受けるために、受益者または転得者に対し、その受けた利益あるいは財産を自己に直接支払いもしくは引渡すべきことを請求できる。