約束手形の振出人が手形法第一七条第一項本文によりいわゆる善意取得者に対し人的抗弁事由を主張、対抗しえない場合においては、差出人は、右取得者からその手形債権を指名債権譲渡の方法により譲り受けた者に対しても(その譲受人が人的抗弁事由につき、悪意であると否とを問わず)、人的抗弁事由を主張、対抗しえない。
約束手形に対するいわゆる善意の手形取得者から指名債権譲渡の方法により手形債権を譲り受けた者に対し、振出人は人的抗弁事由を主張しうるか
手形法17条,民法467条
判旨
善意の手形取得者から指名債権譲渡の方法により手形債権を譲り受けた者は、たとえ人的抗弁について悪意であっても、その抗弁を対抗されない。
問題の所在(論点)
手形法17条本文によって人的抗弁が遮断された善意の取得者から、指名債権譲渡の方法によって手形を譲り受けた者に対し、振出人はなお人的抗弁(原因関係の消滅等)を対抗できるか。譲受人が悪意である場合の影響が問題となる。
規範
指名債権譲渡の方法により手形債権が譲渡された場合、譲受人は譲渡人が有していた権利をそのまま承継する。したがって、前者が手形法17条本文の規定により人的抗弁を遮断された善意の取得者であるときは、後者である譲受人は、人的抗弁事由について悪意であるか否かを問わず、振出人から人的抗弁を主張・対抗されることはない。
重要事実
振出人(上告人)と受取人(F社)との間の原因契約が債務不履行により解除された。しかし、受取人から裏書譲渡を受けたDは、契約解除の可能性等を全く予想していなかった善意の取得者であった。その後、被上告人はDから指名債権譲渡の方法によって本件各手形債権を譲り受けた。
あてはめ
本件において、前主であるDは本件各手形の裏書譲渡を受けた際、原因契約が解除されることを予想し得なかった「善意の手形取得者」である。そのため、Dは手形法17条本文により人的抗弁を対抗されない地位を取得している。被上告人はこのDから債権譲渡を受けたのであるから、譲渡人Dの有する「抗弁を対抗されない手形債権」をそのまま承継取得する。よって、被上告人の主観が善意か悪意かを問うまでもなく、振出人は被上告人に対し人的抗弁を主張できない。
結論
振出人は被上告人に対し人的抗弁を対抗できない。上告棄却。
実務上の射程
手形法17条の善意者の地位が、指名債権譲渡という特定承継においても維持されることを示した。答案上は、裏書連続の欠缺がある場合や指名債権譲渡が行われた局面において、前主が善意者であれば後主の善意・悪意を問わず人的抗弁が遮断される(遮断効の承継)という論理で活用できる。
事件番号: 昭和47(オ)1233 / 裁判年月日: 昭和49年2月28日 / 結論: 破棄自判
約束手形の受取人甲が、乙からその手形の割引を受け、裏書をしないでこれを乙に交付したときは、甲は、指名債権譲渡の方法によつて乙に右手形債権を譲渡したものと解するのが相当である。