判旨
手形取得者の前者が善意の取得者である場合、後者が悪意であったとしても、後者はその瑕疵を承継せず、適法に手形上の権利を取得する。
問題の所在(論点)
手形法16条2項により善意取得した者から手形を譲り受けた者が、譲受時に悪意であった場合、人的抗弁の切断や権利取得の効果を享受できるか。
規範
手形の善意取得(手形法16条2項)が認められる者が介在した場合、その後の取得者は、たとえ自身が悪意または重過失であったとしても、前者の権利をそのまま承継取得する(いわゆる「傘の理論」)。
重要事実
上告人を振出人とする手形について、裏書人Dが裏書譲渡を受けた。Dは原審において善意の取得者であると認定された。その後、被上告人がDから当該手形を取得したが、被上告人が悪意であるとしてその権利取得が争われた。
あてはめ
本件において、被上告人の直接の前者である裏書人Dは、原審の認定によれば善意の取得者である。このように一度善意取得が成立し、無権利状態や抗弁の付着といった瑕疵が治癒された以上、その後の譲受人である被上告人は、Dの有する完全な権利を承継する。したがって、被上告人自身の善意・悪意は、手形上の権利行使の可否に影響を及ぼさない。
結論
被上告人の請求は認容される。善意の取得者から譲り受けた者は、たとえ悪意であっても権利を適法に取得する。
実務上の射程
手形法16条2項の適用に関する基本判例である。答案上は、悪意の譲受人が現れた際に、その前者が善意取得の要件を満たしていれば、承継取得の法理(傘の理論)により権利取得を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 昭和27(オ)160 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形振出行為に民法上の錯誤(現95条)の規定を適用するとしても、その無効(現:取消し)をもって、善意の手形譲受人に対抗することはできない。 第1 事案の概要:上告人(振出人)は、手形の振出行為に錯誤(旧民法95条)があったとして、その無効を主張した。これに対し、被上告人(被控訴人)は、上告人から直…