判旨
期限後裏書の譲受人が、振出人の保証人に対して手形金請求をする際、譲受人が保証の経緯(絶対に迷惑をかけない等の言辞)を知っていたとしても、それのみでは悪意の抗弁は成立しない。
問題の所在(論点)
手形保証人が振出人から受けた「迷惑をかけない」等の言辞を期限後裏書の譲受人が知っていた場合、手形法20条1項に基づき、譲受人の請求を拒みうるか(悪意の抗弁の成否)。
規範
手形法20条1項ただし書に基づき、期限後裏書は指名債権譲渡の効力しか有しないため、債務者は譲渡人に対して有した抗弁をもって譲受人に対抗できる。しかし、振出人による「返済資金のあてがあり絶対に迷惑をかけない」という主観的な保証文句や動機の不法等は、直ちに譲受人に対する対抗要件となる抗弁事由を構成するものではない。
重要事実
上告人Aは、訴外Dが代表を務める上告会社の債務について手形保証を行った。その際、DはAに対し「返済資金のあてがあり、絶対に迷惑をかけない」と述べていた。その後、被上告人は本件手形につき期限後裏書を受けた。Aは、被上告人が右の事情を熟知していたことを理由に、悪意の抗弁を主張して支払いを拒絶した。
あてはめ
期限後裏書によって指名債権譲渡の効力が生じる結果、譲受人は譲渡人が有していた権利の瑕疵を引き継ぐ。しかし、振出人Dが保証人Aに対して述べた「返済資金のあてがある」「迷惑をかけない」といった言辞は、あくまで保証契約の動機や内部的な事情に過ぎない。被上告人がこの事情を「熟知」していたとしても、それが直ちに手形上の請求を妨げるような、対抗可能な人的抗弁の存在を基礎付けるものではないといえる。
結論
被上告人の手形金請求は認められる。保証の経緯を譲受人が知っていたとしても、悪意の抗弁は成立しない。
実務上の射程
期限後裏書における抗弁の承継の範囲を画する事案である。指名債権譲渡の効力といえども、いかなる事情も抗弁になるわけではなく、実体法上の権利消滅事由や無効事由に至らない単なる動機や経緯の知得は、対抗できる「抗弁」には該当しないことを示唆している。
事件番号: 昭和27(オ)94 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形取得者の前者が善意の取得者である場合、後者が悪意であったとしても、後者はその瑕疵を承継せず、適法に手形上の権利を取得する。 第1 事案の概要:上告人を振出人とする手形について、裏書人Dが裏書譲渡を受けた。Dは原審において善意の取得者であると認定された。その後、被上告人がDから当該手形を取得した…