判旨
裏書人が裏書による担保責任を免除する旨を合意したとしても、それは手形外の人的抗弁にとどまる。したがって、裏書人は当該特約を対抗できる特定の所持人以外の第三者に対しては、原則として担保責任を免れることができない。
問題の所在(論点)
裏書による担保責任を免除する旨の合意(いわゆる形式的裏書の抗弁)は、手形法上どのような性質を有し、どの範囲の者に有効か。
規範
裏書は手形上の権利移転および資格授与の効力を有するが、これに伴う担保責任を免除する旨の特約は、手形法上の記載事項(無担保裏書等)とならない限り、手形外の個人的・実質的関係に基づく「人的抗弁」に該当する。そのため、かかる抗弁は特定の当事者間でのみ有効であり、手形の流通を助成する観点から、善意の第三者等の特定の所持人以外には対抗できない。
重要事実
上告人は、本件手形に裏書をしたが、これは形式的なものであり、裏書による担保責任を免除する旨の特約(特約に基づき担保的効力を有しないとする合意)が存在したと主張した。原審は、裏書をする意思自体は存在したと認定した上で、担保責任を免除する合意の性質が問題となった。
あてはめ
本件における担保責任免除の主張は、手形法上の裏書行為自体を否定するものではなく、裏書の効力のうち担保的効力を制限しようとするものである。このような合意は、手形面上に現れない手形外の特約であるから、手形法上の「人的抗弁」として構成される。人的抗弁である以上、特定の債務者が特定の所持人に対してのみ主張し得るものであり、本件においてもその抗弁を特定の相手方以外に主張することは認められない。
結論
裏書担保責任免除の特約は人的抗弁にすぎず、特約の当事者以外の者等に対してはその無効を主張できない。したがって、上告人の担保責任を認めた原審の判断は妥当である。
実務上の射程
手形外の合意(無担保の特約など)がなされた場合でも、手形面上に「無担保」等の記載がない限り、それは人的抗弁にとどまるという基本原則を示す。答案上は、裏書人の責任(手形法15条1項)を追及する場面で、債務者が抗弁として「担保責任免除の合意」を主張した場合、それが人的抗弁(同法17条)にすぎないことを指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1277 / 裁判年月日: 昭和29年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形振出人が手形債務を負担しない旨の約定が存在する場合、当該手形の授受の趣旨に照らし、手形債務は発生しない。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し、本件手形に基づく手形金の支払を求めて提訴した。これに対し、被上告人は「手形債務を負担しない約定である」旨の抗弁を提出し、原審もこの事実を認定した。…