判旨
手形裏面の拒絶証書作成義務免除の文言に隣接して署名がある場合、特段の事情がない限り、一個の署名が裏書の署名と免除文言に対する署名を兼ねるものと解される。
問題の所在(論点)
手形裏面に印刷された拒絶証書作成義務免除の文言の後に裏書人が署名した場合に、当該署名が免除文言に対しても効力を有するか。また、欄外の捺印によって当該文言が抹消されたと解すべきか。
規範
手形法上の拒絶証書作成義務の免除(手形法46条1項)が有効に成立するためには、免除の文言とその記載をした者による署名(記名押印)を要する。この際、裏書の署名とは別に免除専用の署名がなされている必要はなく、手形面上の記載・捺印全体の態様に照らし、一個の署名が裏書の署名たると共に免除文言を包括する趣旨でなされたと認められる場合には、免除の効力が発生する。
重要事実
上告人は約束手形を裏書譲渡した際、裏面の裏書欄において、指図文言に続いて「拒絶証書作成の義務を免除す」との印刷不動文字(免除文言)がある形式のものを使用し、その次に自己の署名を行った。また、裏書部分上部の欄外に捺印が一つあったが、これは免除文言の上部ではなく指図文言の上部に位置していた。上告人は、この欄外の捺印は慣習上免除文言を抹消する趣旨であり、免除の合意はなかったと主張して争った。
あてはめ
本件では、上告人の署名は免除文言の直後になされており、記載全体の態様から見て、当該署名は裏書の署名であると同時に免除文言を確認・承認する署名を兼ねていると認められる。他方、上告人が指摘する欄外の捺印は、免除文言から離れた指図文言の上部になされているに過ぎない。このような捺印は、記載の訂正に備えたものか、あるいは記載内容を確認する趣旨と解するのが合理的であり、経験則上、免除文言を抹消する意思表示とまで解することはできない。
結論
上告人の署名は拒絶証書作成義務免除の署名を兼ねるものと認められ、上告人は免除の特約を付して裏書譲渡したものと解される。したがって、免除は有効である。
実務上の射程
手形行為における意思表示の解釈として、手形面上の署名の包括的効力を認めた事例である。答案上は、手形行為の解釈において、手形面上の客観的な記載態様を重視すべきという文言証券性の観点から、形式的な記載から裏書人の意思を認定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)768 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】隠れたる取立委任裏書によって手形を交付した裏書人は、当該手形が返還された場合には、裏書の抹消により形式的資格を回復しなくとも、返還の事実を証明すれば手形上の権利を行使できる。 第1 事案の概要:被上告人(裏書人)は、本件手形を取立委任の目的で銀行(被裏書人)に対し、譲渡裏書の形式(隠れたる取立委任…