約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。
手形の被裏書人の記載の抹消と裏書の効力
手形法16条1項,手形法77条1項1号
判旨
約束手形の裏書欄において被裏書人名のみが抹消された場合、当該裏書は権限ある者による抹消の証明を要せず、白地式裏書として手形法上の裏書の連続が認められる。
問題の所在(論点)
裏書欄の被裏書人名のみが抹消された場合、手形法16条1項(同法77条1項1号で準用)にいう裏書の連続が認められるか。また、その際に所持人は抹消の正当な権限を証明する必要があるか。
規範
約束手形の裏書欄の記載事項のうち、被裏書人欄の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、抹消が権限のある者によってされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となると解すべきである。これは、被裏書人の記載のみをないものとして扱うことが合理的であり、取引通念に照らしても相当であって、手形の流通保護に資するためである。
重要事実
約束手形の所持人(被上告人)が手形金を請求した事案において、当該手形の裏書欄に、かつて記載されていた被裏書人の名称が抹消された跡があった。この抹消が正当な権限に基づくものか、あるいは裏書の連続を欠く不備にあたるかが争点となった。
あてはめ
本件手形においては、受取人から被上告人に至るまでの過程で被裏書人欄の抹消が存在するが、規範に照らせば、この抹消によって当該裏書は白地式裏書に転化したものとみなされる。したがって、抹消の経緯や権限の有無を立証する必要はなく、形式上、裏書の連続は遮断されていないといえる。
結論
本件手形の裏書の連続に欠けるところはなく、所持人である被上告人は適法な所持人と推定される。よって、被上告人の請求を認めた原審の判断は正当である。
実務上の射程
手形の形式的資格(裏書の連続)の判断基準を示す重要な判例である。答案上では、裏書の一部に抹消がある事案において、それが「被裏書人のみ」の抹消であれば、白地式裏書として有効な連続を認める論理として活用できる。ただし、署名(記名捺印)自体が抹消されている場合は、裏書そのものの効力が失われ、裏書の連続が遮断される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和28(オ)491 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
約束手形の裏書人が、裏書を抹消することなく所持人として提起した手形金請求訴訟において、振出人から裏書の連続を欠く旨の抗弁が提出された後に右裏書を抹消した場合においても、手形法第一六条により右裏書はこれを記載せざりしものとみなすべきものである。