手形法第一四条を正解しないで手形の白地裏書につき白地補充の欠缺を主張した事例。
判旨
手形法14条の規定に照らし、白地裏書がなされた手形を取得した者は、白地を補充することなくそのまま更に裏書譲渡することが可能であり、白地補充の欠缺を理由に手形権利の行使が否定されることはない。
問題の所在(論点)
手形の裏書が白地(被裏書人が空欄)である場合に、その白地を補充することなく手形上の権利を譲渡または行使することが認められるか。手形法14条の解釈が問題となる。
規範
手形法14条1項および2項によれば、白地裏書がなされた手形の所持人は、白地を自己または他人の名称に補充して譲渡するほか、白地を補充せずにそのまま他人に手形を交付して譲渡することも認められている。したがって、白地裏書が連続している場合、所持人が白地を補充していないことは手形上の権利行使を妨げる事由とはならない。
重要事実
上告人は、本件手形の裏書が白地裏書であったところ、その白地補充が欠けていることを理由に、手形債務の不履行や権利の不成立を主張して上告した。原審においては、手形債権消滅の事実や、白地裏書に関する具体的な事実関係についての主張・認定は十分になされていなかった。
あてはめ
手形法14条は、白地裏書のある手形の所持人に対し、白地を補充して譲渡する方法のみならず、補充せずに手形を単に交付する方法(同条2項3号)をも認めている。本件において、上告人が主張する「白地補充の欠缺」は、同条の規定に照らせば手形法上の正当な権利行使を妨げる瑕疵とはいえない。また、前提となる事実関係の主張・認定も不足しているため、理由不備等の違法も認められない。
結論
白地裏書の補充がないことを理由とする抗弁は採用できず、手形債権の行使は有効である。本件上告は棄却される。
実務上の射程
手形法14条の基本的な解釈を示すものであり、白地裏書の連続(形式的資格の付与)を論じる際の基礎となる。白地裏書後の交付による譲渡が有効であることの根拠として答案で使用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
手形法第一六条第一項にいう裏書の連続は、その形式によりこれを判定すれば足り、裏書が真正なものかどうかは問うところではない。