判旨
手形法上の裏書の連続性は、抹消された裏書を存在しないものとして判断されるべきであり、裏書が抹消されている場合には裏書の連続を欠くことにはならない。
問題の所在(論点)
手形上の裏書が抹消されている場合に、手形法16条1項にいう「裏書の連続」が認められるか、その判断基準が問題となる。
規範
手形法16条1項は、裏書の連続によって所持人が権利者と推定される旨を定めている。裏書の一部が抹消されている場合、その抹消された裏書は記載がなかったものとみなして裏書の連続性を判断する。したがって、中間裏書が抹消されていても、残存する裏書の連鎖に不備がなければ裏書の連続は認められる。
重要事実
上告人は、被上告人が所持する約束手形(金額18万3000円)について、裏書の連続を欠いていると主張して争った。当該手形には第一、第二の裏書が存在していたが、いずれも抹消されている状態であった。第一審および原審は、当該裏書の抹消により、裏書の連続に欠けるところはないと判断したため、上告人が上告した事案である。
あてはめ
本件手形においては、甲第一号証によれば第一および第二の裏書がいずれも抹消されていることが明らかである。裏書が抹消されている以上、当該裏書は存在しないものとして扱われるため、前後の裏書や受取人欄の記載(適法に補充済み)との整合性において矛盾は生じない。したがって、客観的にみて裏書の連続に欠けるところはないと評価される。
結論
裏書の連続に欠けるところがないとした原審の判断は正当であり、被上告人は手形上の権利を行使することができる。
実務上の射程
裏書抹消がある場合の手形法16条1項の適用場面で活用する。答案上は、抹消された裏書を「無いもの」として扱い、残りの記載から形式的な連続性が確認できれば権利推定が働くことを簡潔に記述する。なお、抹消の権限の有無は原則として連続性の判断に影響しない。
事件番号: 昭和59(オ)1453 / 裁判年月日: 昭和61年7月18日 / 結論: 棄却
約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。