約束手形の第二裏書人丙が振出人甲の手形債務を保証する趣旨でその手形を第一裏書人乙に戻裏書したときは、乙は丙に対して償還を請求することができると解すべきである。
保証のための戻裏書と償還請求。
判旨
手形振出人の債務を保証する趣旨で裏書がなされた場合、被裏書人が後にその手形の第一裏書人として記入し、形式上は裏書の連続により戻裏書の形態となったとしても、当該被裏書人は裏書人に対し、保証の趣旨という人的抗弁を対抗して遡及権を行使できる。
問題の所在(論点)
振出人を保証する趣旨でなされた裏書について、形式的な戻裏書の形が生じた場合、権利者は裏書人に対して遡及権を行使できるか。戻裏書における「後者の責任免除」と人的抗弁の関係が問題となる。
規範
手形の裏書が振出人の債務を保証する趣旨(隠れた手形保証)でなされた場合、その直接の当事者間においては、当該裏書が保証の趣旨であるという合意を人的抗弁として対抗できる。この場合、形式的に戻裏書の関係が生じ、権利者が債務者の後者にあたる状態となったとしても、右の人的抗弁により後者の責任を免れる結果、権利者は依然として遡及権を行使し得る。
重要事実
振出人Dが、被裏書人を被上告人(権利者)として約束手形を振り出した。上告人(裏書人)は、Dの債務を保証する趣旨で当該手形に裏書を行い、Dを通じて被上告人に交付した。この際、第一裏書欄は空白であったが、後に被上告人が自らを第一裏書人として記入した。これにより、形式上は「被上告人(第1)→上告人(第2等)→被上告人(権利者)」という戻裏書の形となったため、上告人は被上告人に対し、後者としての責任(手形法11条3項・47条等)を負わない旨を主張して、被上告人からの遡及を拒絶した。
あてはめ
上告人の本件裏書は、振出人Dの手形上の債務を保証する趣旨でなされたものである。被上告人は、第一裏書人として記入したことで形式上は上告人の前者にあたると同時に、最終的な所持人として上告人の後者にもあたる。しかし、両者間には「上告人が振出人を保証する」という直接の合意(人的事由)が存在する。この合意を対抗できる結果、被上告人は上告人に対し、後者としての遡及制限を受けることなく、保証的裏書としての責任を追及できると解される。上告人はこの人的事由を否定できず、遡及を拒めない。
結論
被上告人は上告人に対し、本件手形の遡及権を行使することができる。
実務上の射程
隠れた手形保証において、形式上の裏書順序により戻裏書(自己指図裏書等の変形)が生じた場合の処理を示す。実務上、裏書が保証目的であることの立証ができれば、手形法上の戻裏書の原則を排して、実態通りの権利行使を認める根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)926 / 裁判年月日: 昭和33年3月20日 / 結論: 棄却
手形法第七条による裏書人の手形上の責任は、取得者の悪意により消長を来たさないと解すべきである。