手形法第七条による裏書人の手形上の責任は、取得者の悪意により消長を来たさないと解すべきである。
手形法第七条による署名者の責任と取得者の悪意
手形法7条
判旨
手形振出人の代表者名義が真実に反する場合であっても、真正な裏書人は、所持人がその事実を知っていたか否かにかかわらず、裏書人としての手形上の責任を免れない。
問題の所在(論点)
手形振出人の代表者名義が虚偽である場合において、その事実を知っている(悪意の)所持人に対し、真正な裏書人は裏書人としての手形上の責任を負うか。先行する手形行為の瑕疵が後続の裏書人の責任に影響を及ぼすか(手形行為独立の原則の成否)。
規範
手形行為独立の原則(手形法7条等参照)により、先行する手形行為が形式的不備以外の事由(無効・取消し・偽造等)により無効であっても、独立の署名(裏書)を行った者は、その署名により生じる手形上の義務を負担する。所持人の悪意は、当該裏書人の責任を否定する事由にはならない。
重要事実
本件手形において、振出人の代表者名義が真実に反する(代表権の欠如または偽造の疑いがある)状態であった。上告人は、この手形に対して真正な裏書を行った裏書人である。被上告人(手形所持人)は、振出人の代表者名義が真実に反することを知っていたとされる。
あてはめ
上告人は本件手形の真正な裏書人であり、自ら有効に署名を行っている。仮に振出人の代表者名義が真実に反し、振出行為自体に瑕疵があったとしても、手形行為独立の原則により、上告人の裏書行為から生じる責任は振出行為の効力に依存しない。したがって、所持人である被上告人が振出名義の虚偽について悪意であったとしても、上告人の裏書人としての責任は消長を来さず、有効に成立する。
結論
上告人は、振出人の代表者名義の虚偽に関する被上告人の悪意にかかわらず、裏書人としての手形債務を負担する。
実務上の射程
手形行為独立の原則の典型例を示す判例である。答案上は、先行する手形行為(振出等)が偽造や無権代理等により無効である場面において、後続の裏書人の責任を論じる際の根拠として活用する。所持人が先行行為の瑕疵について悪意であっても、裏書人の責任は否定されないことを明示する際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)688 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
約束手形の第二裏書人丙が振出人甲の手形債務を保証する趣旨でその手形を第一裏書人乙に戻裏書したときは、乙は丙に対して償還を請求することができると解すべきである。