判旨
手形振出人が手形債務を負担しない旨の約定が存在する場合、当該手形の授受の趣旨に照らし、手形債務は発生しない。
問題の所在(論点)
手形振出の事実がある場合に、当事者間で「手形債務を負担しない」旨の特約があることが、手形金請求に対する有効な抗弁となり得るか。
規範
手形行為がなされた場合であっても、当事者間に「手形債務を負担しない」との明示的または黙示的な特約(約定)が認められるときは、その授受の趣旨に従い、手形上の責任は否定される。
重要事実
上告人が被上告人に対し、本件手形に基づく手形金の支払を求めて提訴した。これに対し、被上告人は「手形債務を負担しない約定である」旨の抗弁を提出し、原審もこの事実を認定した。また、上告人は貸借債務の残額等に関する事実関係の審究を求めたが、原審は特約の存在を理由にこれを不要とした。
あてはめ
本件では、被上告人の抗弁が「手形債務を負担しない約定」であると解され、原審においてその事実が認定されている。かかる特約が存在する以上、手形授受の本来的な趣旨が制限されているといえる。したがって、貸借債務の残額といった前提事実を審究するまでもなく、当該特約の存在のみによって手形上の責任を否定した原審の判断は正当である。
結論
手形債務を負担しない約定がある以上、手形金請求は認められない。
実務上の射程
手形の「隠れた取立委任」や「担保目的」の抗弁など、当事者間の人的抗弁として、手形行為の形式的効力を実質的に制限する場面で活用できる。ただし、善意の第三者に対しては手形法上の制限(人的抗弁の切断)が問題となる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和29(オ)479 / 裁判年月日: 昭和31年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裏書人が裏書による担保責任を免除する旨を合意したとしても、それは手形外の人的抗弁にとどまる。したがって、裏書人は当該特約を対抗できる特定の所持人以外の第三者に対しては、原則として担保責任を免れることができない。 第1 事案の概要:上告人は、本件手形に裏書をしたが、これは形式的なものであり、裏書によ…