部下への暴行等の行為をした地方公共団体の消防職員が地方公務員法28条1項3号に該当するとして分限免職処分がされた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、分限処分に係る任命権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記行為の内容は、現に刑事罰を科されたものを含む暴行、暴言、極めて卑わいな言動、プライバシーを侵害した上に相手を不安に陥れる言動等である。 ⑵ 上記行為は、5年を超えて繰り返され、約80件に上るものである上、その対象となった消防職員も、約30人と多数であって、上記地方公共団体の消防職員全体の人数の半数近くを占める。 ⑶ 上記行為の中には、上記処分を受けた消防職員の行為を上司等に報告する者への報復を示唆する発言等も含まれている。
部下への暴行等の行為をした地方公共団体の職員が地方公務員法28条1項3号に該当するとしてされた分限免職処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例
地方公務員法28条1項3号
判旨
地方公務員法28条1項3号に基づく分限免職処分は、職員が職に必要な適格性を欠き、改善の余地がないと認められる場合に、任命権者の裁量権の行使として許容される。本件では、多数の職員に対し長期間繰り返された深刻なパワハラ行為に鑑み、組織運営の確保が困難であるとしてなされた処分は、裁量権の範囲内であり適法である。
問題の所在(論点)
本件各行為を理由とする分限免職処分が、任命権者に与えられた裁量権の範囲内にあるか。特に、職場環境の影響や指導機会の欠如を理由に「重きに失する」とされるべきか。
規範
地方公務員法28条に基づく分限処分については、任命権者に一定の裁量権が認められるが、その判断が合理性を持つものとして許容される限度を超えた場合には、裁量権を逸脱・濫用したものとして違法となる。特に免職処分は公務員の地位を失わせる重大な結果を招くため、その判断は厳密かつ慎重であることが要求される。
事件番号: 平成14(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成16年3月25日 / 結論: 破棄自判
郵便外務事務に従事していた郵政事務官が,約7年間にわたり胸章不着用,始業時刻後の出勤簿押印,標準作業方法違反,研修拒否,超過勤務拒否等を繰り返し,合計937回の指導及び職務命令,13回の注意,118回の訓告,5回の懲戒処分を受けたが,懲戒処分に対する人事院の判定が下されるまでは,懲戒処分の理由とされた非違行為を一向に改…
重要事実
消防職員であった被上告人は、約9年間にわたり部下等約30名に対し、暴行(殴打、蹴り等)、暴言(「殺すぞ」等)、卑わいな言動、プライバシー侵害、報復の示唆など約80件のパワハラ行為(本件各行為)を行った。調査によれば、職員の半数近くが被害に遭い、被上告人との同班を拒否する者や報復を懸念する者が相当数に上った。消防長は、被上告人が資質を欠き改善の余地がなく、組織への悪影響が甚大であるとして、法28条1項3号に基づき分限免職処分を行った。
あてはめ
本件各行為は5年以上にわたり約80件と多回数かつ広範囲に行われており、刑事罰(罰金刑)を受けるほどの暴行も含まれる。これらに表れた粗野な性格は、消防職員としての一般的適格性を欠くとみるのが合理的であり、頻度等に鑑み改善の余地がないとする判断も不合理ではない。また、緊密な意思疎通が不可欠な消防組織において、報復の懸念から組織運営を困難にさせた影響は公務の能率維持の観点から看過し難い。原審が指摘する「厳しい職場環境」や「改善機会の欠如」を考慮しても、行為の悪質性と組織への深刻な影響を重視した処分は、厳密・慎重な判断を要することを踏まえてもなお合理性を有する。
結論
本件処分は任命権者の裁量権の範囲内であり、適法である。原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却する。
実務上の射程
分限免職における「適格性の欠如」の判断において、行為の反復性、対象の広汎性、内容の悪質性に加え、組織運営(特に信頼関係が不可欠な職種)に与えた実害を重視する枠組み。公務員の身分保障を考慮しつつも、深刻なパワハラ事例では指導機会の付与を経ずとも免職が正当化され得ることを示した。
事件番号: 令和6(行ヒ)241 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動等を理由として懲戒免職処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の小隊長…
事件番号: 令和6(行ヒ)214 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動を理由として停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の分…