郵便外務事務に従事していた郵政事務官が,約7年間にわたり胸章不着用,始業時刻後の出勤簿押印,標準作業方法違反,研修拒否,超過勤務拒否等を繰り返し,合計937回の指導及び職務命令,13回の注意,118回の訓告,5回の懲戒処分を受けたが,懲戒処分に対する人事院の判定が下されるまでは,懲戒処分の理由とされた非違行為を一向に改めようとせず,上記判定の後は,新たな類型の非違行為を始め,懲戒処分の対象とされなかった非違行為については頑として改めなかったなど判示の事実関係の下においては,上記郵政事務官が国家公務員法78条3号に該当するとしてされた分限免職処分に裁量権の逸脱,濫用の違法があるということはできない。
長期にわたり非違行為等を繰り返した郵政事務官が国家公務員法78条3号に該当するとしてされた分限免職処分に裁量権の逸脱,濫用の違法があるとはいえないとされた事例
国家公務員法78条3号,国家公務員法98条1項,人事院規則11−4(職員の身分保障)7条3項,行政事件訴訟法30条,日本郵政公社法施行法4条,日本郵政公社法施行法5条,日本郵政公社法施行法11条1項,日本郵政公社法施行法22条
判旨
国家公務員法78条3号の「適格性を欠く場合」とは、容易に矯正できない持続的な素質・性格等により職務遂行に支障が生じる高度の蓋然性がある場合を指す。長期にわたり多数の非違行為を繰り返し、指導や懲戒にもかかわらず一部の改善に留まる職員について、分限免職処分を適法とした。
問題の所在(論点)
数多くの非違行為を反復し、一部について改善の兆しを見せつつも全体として服務規律を遵守しない職員に対し、国家公務員法78条3号(適格性の欠如)を理由とする分限免職処分を行うことが、人事権者の裁量権の範囲内として許容されるか。
規範
国家公務員法78条3号にいう「適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいう。その判断にあたっては、職員の外部に表れた行動・態度を、その性質・背景等から個別的かつ有機的に関連付けて評価し、経歴や性格等の一般的要素も含め、当該職に要求される一般的適格性の要件と照らして総合的に検討すべきである。
重要事実
郵政事務官である被上告人は、約7年間にわたり超過勤務命令拒否、研修拒否、胸章不着用、管理者への暴言等の非違行為を繰り返した。この間、指導・職務命令は937回、訓告は118回、懲戒処分は5回に及んだ。被上告人は、懲戒処分を受けても人事院の判定が下るまでは行為を改めず、一部を改善しても別の非違行為を開始し、懲戒対象外の胸章不着用等は頑として改めなかった。当局が分限免職処分(本件処分)としたところ、原審は一部の改善傾向を理由に裁量権逸脱・濫用を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
被上告人は、長期にわたり多種多様な非違行為を反復し、膨大な数の指導や懲戒を受けても、人事院の判定が出るまで拒否姿勢を崩さず、終始無言で職務命令に従わない態度を採り続けた。一部の行為を是正したとしても、それは強制的な判定を受けた結果に過ぎず、同時に別の類型の非違行為を開始するなど、服務規律を遵守する意思の欠如は顕著である。このような態度は、一時的な過誤ではなく、容易に矯正できない素質や性格に基因するものと評価せざるを得ない。したがって、職務の円滑な遂行に支障を生ずる高度の蓋然性が認められ、適格性を欠く状態にあるといえる。
結論
本件処分は裁量権の範囲内であり適法である。原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却する。
実務上の射程
分限免職の要件である「適格性」の判断枠組みを示した重要判例。答案では、懲戒(過去の制裁)と分限(将来の適格性判断)の違いに留意しつつ、非違行為の反復性、指導に対する不誠実な態度、性格の持続性といった要素を抜き出して「矯正不能な素質」を基礎付ける際に活用する。
事件番号: 昭和47(行ツ)89 / 裁判年月日: 昭和49年12月17日 / 結論: 棄却
一、条件附採用期間中の国家公務員は、人事院規則一一‐四第九条所定の事由に該当しないかぎり分限されない保障を有する。 二、人事院規則一一‐四第九条に基づく条件附採用期間中の国家公務員に帰する分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量ではなく、その判断が合理性をもつものとして許容される限度をこえたときは、違法となる。
事件番号: 令和4(行ヒ)7 / 裁判年月日: 令和4年9月13日 / 結論: 破棄自判
部下への暴行等の行為をした地方公共団体の消防職員が地方公務員法28条1項3号に該当するとして分限免職処分がされた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、分限処分に係る任命権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記行為の内容は、現に刑事罰を科されたも…