判旨
国家公務員法78条3号の「適格性を欠く場合」とは、職員の容易に矯正できない持続的な素質等により、職務の円滑な遂行に支障があるか、その高度の蓋然性が認められる場合をいう。長期間にわたり多数の指導や懲戒を受けても非違行為を繰り返し、一向に改善の兆しを見せない職員に対する免職処分は、裁量権の範囲内として適法とされる。
問題の所在(論点)
国家公務員法78条3号の「官職に必要な適格性を欠く場合」の意義、および長期間の非違行為を理由とする分限免職処分が裁量権の逸脱・濫用に当たるか。
規範
国家公務員法78条3号にいう「その官職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因して、その職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいう。その適格性の有無は、職員の外部に表れた一連の行動や態度を相互に有機的に関連付けて評価し、経歴や性格等の一般的要素をも総合的に検討して判断すべきである。
重要事実
郵政事務官である被上告人は、約7年間にわたり、超過勤務命令拒否、胸章不着用、標準作業方法違反等の多岐にわたる非違行為を反復した。この間、合計937回の指導、118回の訓告、5回の懲戒処分を受けたが、上司の指導に対し終始無言で応じない態度を貫いた。懲戒処分を受けても、人事院の判定が下るまでは当該行為を改めず、一部を改善しても別の非違行為を新たに開始するなど、服務規律を遵守する姿勢を欠いていた。任命権者は、適格性欠如を理由に分限免職処分(本件処分)を行った。
あてはめ
被上告人の行為は、7年という長期にわたり、900回を超える指導や多数の懲戒処分にもかかわらず繰り返されており、その態様も職務命令を無視し無言を貫くという極めて不誠実なものである。懲戒処分が確定するまで改善せず、一部改善後も新たな非違行為に及ぶ等の態度は、単なる過失ではなく、容易に矯正できない素質や性格に起因するものと評価できる。このような状況下では、職務の円滑な遂行に支障が生ずる高度の蓋然性が認められ、適格性を欠く状態にあるといえる。したがって、本件処分に慎重さを欠く点や考慮不尽などの違法は認められない。
結論
本件処分が裁量権の範囲を超え、これを濫用したものとはいえないため、適法である。
事件番号: 平成14(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成16年3月25日 / 結論: 破棄自判
郵便外務事務に従事していた郵政事務官が,約7年間にわたり胸章不着用,始業時刻後の出勤簿押印,標準作業方法違反,研修拒否,超過勤務拒否等を繰り返し,合計937回の指導及び職務命令,13回の注意,118回の訓告,5回の懲戒処分を受けたが,懲戒処分に対する人事院の判定が下されるまでは,懲戒処分の理由とされた非違行為を一向に改…
実務上の射程
分限処分における「適格性」の判断枠組みを明示した重要判例である。答案上では、形式的な非違行為の回数だけでなく、指導に対する「態度」や「改善の意欲(またはその欠如)」、行為の「持続性」を重視してあてはめる際の指針となる。
事件番号: 昭和52(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和54年7月31日 / 結論: 棄却
(省略) (補足意見がある。)
事件番号: 令和4(行ヒ)7 / 裁判年月日: 令和4年9月13日 / 結論: 破棄自判
部下への暴行等の行為をした地方公共団体の消防職員が地方公務員法28条1項3号に該当するとして分限免職処分がされた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が違法であるとした原審の判断には、分限処分に係る任命権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記行為の内容は、現に刑事罰を科されたも…
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。