公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。
公務員の分限免職と行政庁の裁量権
地方公務員法23条1項
判旨
公務員の分限免職処分は、処分権者の合理的な裁量に委ねられており、その判断が裁量権の限界を踰越したり、これを濫用したりしたと認められない限り、適法である。
問題の所在(論点)
地方公務員法28条1項に基づく分限免職処分について、任命権者にどの程度の裁量が認められるか。また、裁量権の限界を踰越・濫用したとされる基準は何か。
規範
公務員の分限免職処分は、公務の能率を維持し、適正な運営を確保するという行政目的のために行われる。そのため、地方公務員法28条1項各号の事由に該当するか否か、および免職を選択するか否かの判断は、任命権者の合理的な裁量に委ねられる。裁判所は、当該判断が裁量権の限界を踰越し、またはその濫用があったと認められる場合に限り、これを取り消すことができる。
重要事実
地方公務員である上告人が、地方公務員法28条1項1号(勤務実績が良くない場合)および3号(適格性を欠く場合)に該当するとして分限免職処分を受けた。これに対し、上告人は免職事由の不存在や処分の裁量権逸脱・濫用、さらには労働基準法20条(解雇予告)違反等を理由に、処分の無効または取消しを求めて争った。
事件番号: 昭和35(オ)694 / 裁判年月日: 昭和37年7月13日 / 結論: 破棄自判
一 小学校教諭が三月二五日に学校長に退職願を提出したが、同日夜撤回を決意し、翌二六日学校長に対し撤回方の尽力を依頼し、翌二七日市教育委員会学校教育課長に撤回を申し入れ、さらに、翌二八日に県教育委員会委員長に対し、退職願取消の申入と題する自己名義の文書に押印し発送した場合は、年度末教員の大異動が差し迫つていたからといつて…
あてはめ
原審の認定によれば、上告人には地方公務員法28条1項1号および3号所定の免職事由(勤務実績不良・適格性欠如)が認められる。本件免職処分において、任命権者が諸般の事情を考慮して免職を選択した判断過程には、不合理な点は見当たらない。したがって、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認めるべき特段の事情は存在しない。
結論
本件免職処分は、裁量権の範囲内で行われた適法なものであり、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
行政法における「裁量権の逸脱・濫用」の典型例として、分限免職処分の適法性を論じる際に引用される。具体的には、条文上の要件該当性判断だけでなく、処分の選択(効果の裁量)についても広範な裁量を認める判例として位置づけられる。答案上は、まず法律の目的から裁量の存在を導き、事実関係を考慮して判断の合理性を検討する枠組みで用いる。
事件番号: 昭和58(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和63年1月21日 / 結論: 棄却
教職員組合が教職員の定数確保、昇級・昇格の完全実施等の要求を掲げていつせい休暇闘争を行つたが、当時県当局が実施した定数削減、定期昇級・昇格発令延伸等は極度の財政逼迫状態のもとでやむなくとられた措置であり、また、右休暇闘争は三日間にわたり三日間で県下小・中学校の教職員の延べ約八割七分に及ぶ約五二〇〇名が参加して行われたも…
事件番号: 昭和34(オ)396 / 裁判年月日: 昭和35年7月21日 / 結論: 棄却
一 町村合併による新町の発足により旧町村の正式職員であつた者が新たに新町の職員として任命されたような場合には、条件附任用に関する地方公務員法第二二条の適用はない。 二 地方公務員法第二八条第一項第一号、第三号に該当するかどうかの判断は、任命権者の純然たる自由裁量に任された事項ではなく、同条の趣旨にそう一定の客観的標準に…
事件番号: 昭和28(オ)34 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しに関する争いにおいて、処分が行政法上当然に無効であると認められない限り、適法に確定した事実に照らして当該処分を有効と認めるのが相当である。 第1 事案の概要:上告人は、本件の各取消処分および取消の決定について、憲法違反を主張するとともに、実質的にこれらが行政法上無効であると主張して…