教職員組合が教職員の定数確保、昇級・昇格の完全実施等の要求を掲げていつせい休暇闘争を行つたが、当時県当局が実施した定数削減、定期昇級・昇格発令延伸等は極度の財政逼迫状態のもとでやむなくとられた措置であり、また、右休暇闘争は三日間にわたり三日間で県下小・中学校の教職員の延べ約八割七分に及ぶ約五二〇〇名が参加して行われたものであり、それが教科の進度に遅れを生じさせ、児童生徒に精神的な不安、動揺を与えたことは否定できないなど判示の事実関係のもとでは、組合役員として右休暇闘争を企画し又はその遂行を指導推進したことを理由としてされた公立小・中学校の教諭に対する停職六か月ないし一か月の懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、裁量権の範囲を超えこれを濫用したものとはいえない。
教職員組合のいつせい休暇闘争を企画し又はその遂行を指導推進したことを理由としてされた公立小・中学校の教諭に対する懲戒処分が裁量権の範囲を超えこれを濫用したものとはいえないとされた事例
地方公務員法29条1項,地方公務員法37条1項
判旨
地方公務員による争議行為は、その違法性の強弱を問わず懲戒処分の対象となり、懲戒権者の裁量権行使が社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を逸脱・濫用したと認められない限り、当該処分は適法である。
問題の所在(論点)
地方公務員法37条1項により一律に禁止される争議行為に対し、違法性の程度を考慮せず懲戒処分の対象とすることの可否、および本件懲戒処分が裁量権の逸脱・濫用に該当するか。
規範
地方公務員法37条1項に違反する争議行為について、違法性の強弱により懲戒処分の可否を区別することはできず、同法29条1項に基づく懲戒処分の対象となる。その際、懲戒権者の裁量権の行使は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものと認められる場合でない限り違法とはならない。
重要事実
佐賀県教職員組合の役員である上告人らは、財政逼迫に伴う給与遅払い等の措置に反対し、3日間にわたる「休暇闘争」を企画・指導した。この闘争には県内小中学校教職員の延べ約87%(約5200名)が参加し、教科の遅滞や児童生徒への精神的不安を生じさせた。これに対し、県は上告人らに対し懲戒免職等の処分を行ったため、上告人らが処分の取り消しを求めて提訴した。
あてはめ
まず、地公法上の争議行為禁止規定に違反した以上、違法性の強弱にかかわらず懲戒事由に該当する。次に裁量権の逸脱・濫用について検討するに、組合員の心情に酌むべき点はあっても、当時の佐賀県は極度の財政逼迫状態にあり給与抑制等は止むを得ない措置であった。また、本件闘争は規模が極めて大きく、教育現場に与えた負の影響も多大である。上告人らは指導的立場としてこれらを主導した。これらの諸事情を総合すれば、本件懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠くとは認められない。
結論
本件懲戒処分は懲戒権者の裁量権の範囲内であり、適法である。上告棄却。
実務上の射程
地方公務員の争議行為に対する懲戒処分につき、全農林警職法事件判決(最大判昭48.4.25)等の流れを汲み、刑事罰とは異なり懲戒処分については違法性の強弱による限定を認めない立場を明確にしている。答案上は、公務員の争議行為に対する不利益処分の裁量審査の枠組みとして「社会観念上著しく妥当を欠くか否か」の基準を示す際に活用すべき判例である。
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。
事件番号: 昭和47(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和52年12月20日 / 結論: 破棄自判
一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合であつても、それが同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項の違反となることを妨げられない。 二、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場…