財務局職員たる国家公務員が、勤務評定反対闘争において、「オールA・公開」等現行法規のもとでは許されない要求を貫徹するため、十数日間にわたり違法行為を繰り返し、被評定者の人物能力、適性をはじめその勤務状況を記入した極秘の公文書である勤務状況報告書を当局の意思に反し組合側において保管するという重大な違法行為をしたなど判示の事実関係のもとでは、これらの違法行為を理由としてされた懲戒免職処分は、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものということはできない。
勤務評定反対闘争の際の違法行為を理由としてされた財務局職員たる国家公務員に対する懲戒免職処分が懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものとはいえないとざれた事例
国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)82条
判旨
公務員に対する懲戒処分の選択は懲戒権者の裁量に委ねられ、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法となる。本件では、極秘公文書の奪取や執拗な執務妨害等の重大な違法行為が認められるため、免職処分は裁量権の範囲内である。
問題の所在(論点)
国家公務員法82条に基づく懲戒権の行使において、免職処分の選択が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の逸脱・濫用(行政事件訴訟法30条)にあたるか。
規範
懲戒権者は、懲戒事由に該当する行為の性質、態様、公務員の前後における態度、処分歴、社会への影響等を総合考慮して処分を選択する広範な裁量を有する。当該処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を付与した目的を逸脱・濫用したと認められる場合に限り、違法となる。裁判所は、独自の立場で処分を比較・審査するのではなく、上記濫用の有無のみを判断すべきである。
重要事実
四国財務局の調査主任(組合執行委員長)である被上告人は、勤務評定反対闘争において、(1)勤務時間中の無断会合参加や職務放棄、(2)局長に対する多人数での取り囲みや拡声器を用いた放送による執務妨害、(3)極秘公文書である「勤務状況報告書」を課長と引き剥がしてまで奪取・収集し組合で一時保管した行為、(4)総務課長に対する数回にわたる粗暴な抗議・退去拒否を行った。これに対し、当局は被上告人を懲戒免職とした。
あてはめ
被上告人の行為は、現行法規で許されない要求を貫徹するために十数日間にわたり繰り返された違法行為であり、職場秩序を著しく乱した。特に勤務状況報告書の奪取・保管は、当局の意思に反して極秘文書を占有する悪質なもので、違法性が重大である。また、局長や総務課長に対する行為も単なる不謹慎を超え、多勢で詰め寄る粗暴な性質を帯びていた。これらの情状の重さを考慮すれば、報告書の保管が一時的であったことや、他者との処分差(停職等)があることを勘案しても、免職が著しく妥当を欠くとはいえない。
結論
本件免職処分は社会観念上著しく妥当を欠くものとは認められず、懲戒権の裁量権の範囲内にある。したがって、本件処分は適法である。
実務上の射程
行政裁量、特に懲戒処分の司法審査の在り方(裁量濫用審査)のリーディングケースとして活用される。答案上では、事案の悪質性や職務への影響を具体的に摘示し、結論が「著しく」不当と言えるか否かを検討する際の枠組みとして引用する。
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和47(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和52年12月20日 / 結論: 破棄自判
一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合であつても、それが同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項の違反となることを妨げられない。 二、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場…