条件附採用期間中の郵政省職員が、約一か月余りの間に、五回にわたり、再三の上司の指導注意にもかかわらず、配達すべき書留郵便物の通数を確認せずに配達に出発したり、書留配達証に受取人の受領印を徴することなく帰局し、あるいは帰局後の査数確認をすることなく帰宅したりするなど事務処理上の過誤を繰り返したほか、無断で職場離脱をしたり、配達先からその配達態度について苦情があつたため注意をした上司に対し反抗的な態度を示したなど判示の事実関係のもとにおいては、右職員には自己の職務に対する自覚、意欲、責任感等や服務規律に対する認識が欠けているものとして所轄の郵便局長のした人事院規則一一―四(職員の身分保障)九条に基づく免職処分に裁量権濫用の違法があるとはいえない。
条件附採用期間中の郵政省職員に対する人事院規則一一―四(職員の身分保障)九条に基づく免職処分に裁量権濫用の違法があるとはいえないとされた事例
国家公務員法81条1項,人事院規則11―4(職員の身分保障)9条
判旨
条件附採用期間中の公務員の免職処分は、職員の適格性を欠く者を排除し成績主義を実現する観点から行われるものであり、処分の選択は任命権者の裁量に委ねられる。本件のように、基本的作業の懈怠、無断職場離脱、上司への反抗的態度等が重なる場合、免職処分が裁量権の逸脱・濫用となることはない。
問題の所在(論点)
条件附採用期間中の公務員に対し、懲戒処分(戒告)を行った後に、それ以前の事情も考慮してなされた免職処分(人事院規則11-4第9条)が、裁量権の逸脱・濫用として違法となるか。
規範
1. 条件附採用期間中の免職処分(人事院規則11-4第9条)は、職員の適格性を欠く者を排除し成績主義の原則(国家公務員法2条)を実現する観点から行われるものであり、懲戒処分(同法82条)とは性質を異にする。 2. したがって、懲戒処分を行ったからといって直ちに職員の適格性を肯定したことにはならず、処分権者は勤務実績等を総合的に考慮して、引き続き任用することが適当でないと認めたときは免職処分を行うことができる。 3. 当該処分の適否については、処分権者の合理的な判断に基づくものである限り、裁量権の範囲内として尊重される。
重要事実
郵政省の条件附採用職員であった被上告人は、短期間に5回以上、書留郵便物の通数確認や受領印の徴収を怠る事務ミスを繰り返した。また、無許可で職場を離脱したほか、配達先からの苦情に対して「証拠がない」と述べるなど上司に反抗的態度を示した。上告人は、一旦は職場離脱を理由に戒告処分を行ったが、その後の勤務状況等も含め総合的に判断し、本件免職処分を行った。
あてはめ
1. 書留郵便の性質上、通数確認や受領印の徴収は「基本的かつ重要」な作業であり、過失の回避は容易であった。これを繰り返すことは、職務に対する自覚・責任感の欠如を露呈するものである。 2. 無断職場離脱は公務員として軽視し難い義務違反であり、免職事由の一要素として考慮することに不合理はない。 3. 先になされた戒告処分は個別の義務違反を問うものであり、適格性を肯定するものではない。よって、戒告後の事情のみならず、それ以前の事情を含めて適格性を判断することは許容される。 4. 以上の諸事実を総合すれば、適格性を欠くとした判断に不合理な点は認められない。
結論
本件免職処分は、処分権者の裁量権の範囲内に属する適法なものであり、裁量権の濫用には当たらない。
実務上の射程
条件附採用期間中の職員に対する「本採用拒否(免職)」の裁量権を広く認めた重要判例。懲戒処分(過去の過ちへの制裁)と免職処分(将来に向けた適格性判断)の二元論を明確にしており、先行する軽い懲戒処分が免職の障壁にならない点に射程がある。答案では、公務員の身分保障が条件附期間中は緩和される根拠として活用する。
事件番号: 平成14(行ヒ)154 / 裁判年月日: 平成16年3月25日 / 結論: 破棄自判
郵便外務事務に従事していた郵政事務官が,約7年間にわたり胸章不着用,始業時刻後の出勤簿押印,標準作業方法違反,研修拒否,超過勤務拒否等を繰り返し,合計937回の指導及び職務命令,13回の注意,118回の訓告,5回の懲戒処分を受けたが,懲戒処分に対する人事院の判定が下されるまでは,懲戒処分の理由とされた非違行為を一向に改…
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。
事件番号: 令和6(行ヒ)201 / 裁判年月日: 令和7年4月17日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していた職員が、運賃の着服及び禁止されていたバスの車内における電子たばこの使用を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、京都市交通局職員退職手当支給規程(昭和57年京都市交通局管理規程第5号の2)8条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部を支給しないこと…