一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合であつても、それが同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項の違反となることを妨げられない。 二、裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と右処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものである。 三、勤務時間内の職場集会、繁忙期における怠業、超過勤務の一せい拒否等の争議行為に参加しあるいはこれをあおりそそのかしたことが国家公務員法の争議行為等の禁止規定に違反するなどの理由でされた税関職員に対する懲戒免職処分は、右職場集会が公共性の極めて強い税関におけるもので職場離脱が職場全体で行われ当局の再三の警告、執務命令を無視して強行されたこと、右怠業が業務処理の妨害行為を伴いその遅延により業者に迷惑を及ぼしたこと、右超過勤務の一せい拒否が職場全体に及び業者からも抗議が出ていたこと、職員に処分の前歴があることなど判示のような事情のもとでは、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用したものと判断することはできない。
一、職員の行為が国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項に違反する場合と同法九八条一項、一〇一条一項、人事院規則一四―一第三項違反 二、公務員に対する懲戒処分の適否に関する裁判所の審査 三、争議行為等の禁止規定違反などを理由としてされた税関職員に対する懲戒免職処分が裁量権の範囲を超えこれを濫用したものとはいえないとされた事例
国家公務員法98条1項,国家公務員法(昭和40年法律第69号にる改正前のもの)82条,国家公務員法(昭和40年法律第69号にる改正前のもの)84条,国家公務員法(昭和40年法律第69号にる改正前のもの)98条5項,国家公務員法(昭和40年法律第69号にる改正前のもの)101条1項,人事院規則141(昭和24年5月9日施行)3項,行政事件訴訟法30条
判旨
公務員への懲戒処分は懲戒権者の裁量に委ねられるが、それが社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法となる。
問題の所在(論点)
国公法82条に基づく懲戒免職処分が、裁量権の範囲を逸脱・濫用(行政事件訴訟法30条)したものとして違法となるか。
規範
懲戒権者は、懲戒事由に該当する行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響のほか、対象者の平素の態度や処分歴、社会への影響等を総合的に考慮して処分の選択を行う裁量権を有する。裁判所は、処分の適否の判断において、懲戒権者と同一の立場に立って判断するのではなく、その判断が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきである。
重要事実
神戸税関の職員ら(被上告人ら)は、組合活動として、執務時間内の職場集会、デモ行進、繁忙期における意図的な業務処理の遅延、上司への暴言、および超過勤務命令の拒否・妨害等を行った。神戸税関長(上告人)は、これらが国家公務員法(以下「国公法」)の定める争議行為の禁止や職務専念義務等に違反するとして、被上告人らを懲戒免職処分とした。被上告人らは、本件処分は裁量権を逸脱し違法であるとして取消しを求めた。
あてはめ
まず、被上告人らの行為は、繁忙期において輸出関係書類の処理を意図的に停滞させ、業者に迷惑を及ぼすなど悪質な業務妨害といえ、情状は重い。また、職場集会等も当局の度重なる警告や執務命令を無視して強行されたものである。さらに、被上告人らには過去にも類似の組合活動による懲戒処分歴があり、改善が見られない。これらの諸点に鑑みれば、国民全体の奉仕者としての責任感を著しく欠くものであり、免職処分の選択が社会観念上著しく妥当を欠くとはいえない。
結論
本件懲戒免職処分は、懲戒権者に任された裁量権の範囲内にあり、これを濫用したものとは認められないため、適法である。
実務上の射程
行政処分の裁量審査における「社会観念上著しく妥当を欠く」か否かという審査基準を確立した重要判例である。公務員の懲戒処分だけでなく、広く行政庁の裁量権が認められる場面での規範として、答案上、違法性の審査枠組みを提示する際に用いる。
事件番号: 昭和59(行ツ)46 / 裁判年月日: 平成2年1月18日 / 結論: 破棄自判
学校教育法五一条、二一条所定の教科書使用義務に違反する授業をしたこと、高等学校学習指導要領(昭和三五年文部省告示第九四号)から逸脱する授業及び考査の出題をしたこと等を理由とする県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分は、各違反行為が日常の教科(日本史、地理B)の授業、考査に関して行われたものであつて、教科書使用義務違反の行…
事件番号: 昭和58(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和63年1月21日 / 結論: 棄却
教職員組合が教職員の定数確保、昇級・昇格の完全実施等の要求を掲げていつせい休暇闘争を行つたが、当時県当局が実施した定数削減、定期昇級・昇格発令延伸等は極度の財政逼迫状態のもとでやむなくとられた措置であり、また、右休暇闘争は三日間にわたり三日間で県下小・中学校の教職員の延べ約八割七分に及ぶ約五二〇〇名が参加して行われたも…
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。