一、地方公務員法二八条に基づく分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた場合、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断された場合、あるいは、その判断が合理性をもつものとして許容される限度を超えた場合には、裁量権の行使を誤つたものとして違法となる。 二、地方公務員法二八条一項三号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解すべきである。 三、地方公務員法二八条一項三号に該当することを理由とする分限処分が降任である場合には、それが免職である場合に比して、適格性の有無についての任命権者の裁量的判断の余地を比較的広く認めても差支えない。
地方公務員法二八条に基づく分限処分と任命権者の裁量権 二、地方公務員法二八条一項三号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」の意義 三、地方公務員法二八条一項三号該当を理由とする分限処分が降任である場合の任命権者の裁量権
地方公務員法28条,行政事件訴訟法30条
判旨
地方公務員法28条1項3号による降任処分は、任命権者の広範な裁量に委ねられるが、考慮すべき事項を考慮せず、または判断が合理性の限度を超えて不当な場合は裁量権の逸脱・濫用として違法となる。校長としての適格性判断においては、職務の円滑な遂行を妨げる持続的な素質・能力の有無を、言動、経歴、性格等の諸般の事情から総合的に評価すべきである。
問題の所在(論点)
地方公務員法28条1項3号に基づく降任処分における任命権者の裁量権の範囲と、裁判所による審査の限界、および同号にいう「適格性を欠く場合」の判断基準が問題となる。
規範
分限処分は公務の能率維持と身分保障の均衡を図る制度であり、任命権者に裁量権が認められる。ただし、制度の目的と無関係な動機に基づいたり、判断が恣意にわたり、あるいは社会通念上合理的な限度を超えて不当な場合は違法となる。同法28条1項3号の「適格性を欠く場合」とは、簡単に矯正できない持続的な素質、能力、性格等に基因して、職務の円滑な遂行に支障があり、又はその高度の蓋然性がある場合を指す。適格性の判断は、外部に現れた行動、態度、経歴、社会環境等の諸要素を総合的に検討すべきであり、特に降任処分は免職に比して、公務の能率維持の観点から裁量的判断の余地が比較的広く認められる。
重要事実
公立小学校の校長であった被上告人が、学校統合問題に際して反対派に加担し校長としての品格を欠く言動をとったこと、勤務評定書の提出遅延、教育長に対する不遜な態度、予算の事前執行等の不適切な事務処理があったことなどを理由に、教諭への降任処分を受けた。原審は、個別の事実関係を詳細に確定することなく、統合問題等の背景事情に鑑みれば適格性を欠くとまではいえないとして、裁量権の行使を誤った違法があるとして処分を取り消した。
あてはめ
校長は校務を掌理し職員を監督する立場にあり、学校統合等の紛争下では中立・公正な態度で信頼を維持する高度の適格性が求められる。被上告人の言動が、統合反対派への便宜供与や教育長に対する粗暴・非礼な態度、さらには学校日誌の抹消等の事実を含むのであれば、これらは持続的な性格や資質に由来する不適格性の徴表となり得る。原審は、これらの具体的言動の程度や態様を十分に確定・評価せず、独自の解釈に基づき適格性を肯定したが、これは任命権者の裁量的判断権を無視し、裁判所の審査範囲を超えて処分庁の裁量の当不当に立ち入ったものといえる。
結論
原判決には法令の解釈を誤り、審理を尽くさなかった違法がある。個別の事実関係の存否およびその評価を尽くさせるため、原判決を破棄し、広島高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
分限処分(特に降任)における広範な裁量を認めた重要判例。答案では、①判断代置の禁止(裁判所は当不当ではなく違法性を審査する)、②考慮要素の総合評価(一連の行動の有機的関連性)、③免職と降任の裁量幅の差異、という3点を意識して記述する際に活用する。
事件番号: 昭和28(オ)690 / 裁判年月日: 昭和33年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国立療養所の所長による退所処分は、入所者を施設内にとどめておくことができないほど甚だしく秩序を乱す事情がある場合に、社会通念上不当と認められない範囲内で行われる限り、裁量権の範囲内として適法である。 第1 事案の概要:国立療養所の入所者である上告人ら3名が、所内の指示に従わず、その他不都合な所為(…
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。