判旨
懲戒権者が不正事件の連累者に対して懲戒免職処分を選択することは、監督者の不行届の有無や公正・平等の原則に照らしても、裁量権の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
不正事件に関与した公務員に対する懲戒免職処分の選択が、監督者の責任や公正・平等の原則との関係で、懲戒権者の裁量権を逸脱・濫用したものといえるか。
規範
公務員に対する懲戒処分の選択は懲戒権者の裁量に委ねられており、その判断が公正・平等の原則に著しく反するなど、裁量権を誤ったものと認められない限り違法とはならない。
重要事実
市警察において不正事件が発生し、その連累者である上告人に対し、懲戒権者が懲戒免職処分を下した。上告人は、市警察幹部に監督上の不行届があったことや、公正・平等の原則に反することを理由に、当該処分の裁量権の逸脱・濫用を主張して争った。
あてはめ
仮に市警察幹部に監督上の不行届があったとしても、上告人が不正事件の連累者であり、その行為が懲戒免職に値すると判断される事実関係がある以上、懲戒権者の判断は合理的である。また、他の関係者との対比等における公正・平等の原則の観点から検討しても、本件免職処分の選択が直ちに裁量権の行使を誤ったものとはいえず、法的な逸脱は認められない。
結論
本件懲戒免職処分は、懲戒権者に任された裁量権の範囲内のものであり、適法である。
実務上の射程
公務員の懲戒処分における裁量権の幅を認めた初期の判例の一つ。特に「公正・平等の原則」による裁量統制の限界を示しており、他者との処分の均衡のみを理由に直ちに裁量権の逸脱を認めることには慎重な立場をとるものとして、裁量論の一般論の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。