判旨
公務員の懲戒処分において、不正事件の連累者中で最も情状が軽い者であってもなお懲戒免職に値すると判断される場合には、平等原則に反せず、裁量権の範囲内として適法である。
問題の所在(論点)
公務員に対する懲戒免職処分において、連累者間の情状の差異や監督者の責任を考慮せず一律に重い処分を科すことが、平等原則に反し裁量権の逸脱・濫用となるか。
規範
懲戒権者は、いかなる種類の懲戒処分を選択するかについて広範な裁量権を有している。その裁量権の行使は、客観的にみて著しく妥当性を欠き、または公正・平等の原則に著しく反すると認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる。
重要事実
市警察において不正事件が発生し、これに連関した公務員らに対して懲戒免職処分がなされた。上告人は、連累者の中で最も情状が軽いとされるDも同様に懲戒免職とされたこと、および市警察幹部に監督上の不届きがあったことを理由に、当該処分の平等原則違反や裁量権の濫用を主張して争った。
あてはめ
本件において、不正事件の連累者の中で最も情状が軽いとされる者であっても、その事実関係に照らせばなお懲戒免職に値する程度の非違行為が存在すると認められる。また、仮に監督者である市警察幹部に監督不行届があったとしても、そのことが直ちに個別の連累者の非違行為に対する処分の妥当性を左右するものではない。したがって、本件処分が公正・平等の原則に違反し、裁量権の行使を誤ったものとはいえない。
結論
本件懲戒処分は適法であり、裁量権の逸脱・濫用は認められない。
実務上の射程
懲戒処分の裁量審査において、平等原則は「絶対的な同一性」を求めるものではなく、個別の事案が処分の基準(懲戒免職相当性)を満たしている限り、他者との情状の軽重の差のみをもって直ちに違法とはならないことを示している。答案上は、裁量権逸脱・濫用の判断要素の一つとして、比例原則や平等原則の観点から論じる際に引用する。
事件番号: 昭和35(オ)490 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が運転免許の停止処分を行う際、その理由が過失による交通事故および報告義務違反等の複数の法令違反に基づくものであるならば、当該処分は処分基準(総理府令)に抵触せず、適法である。 第1 事案の概要:上告人は、自動車の運転中に過失により交通事故を起こし、他人に傷害を与えた。また、事故発生後にその内…
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。