道路運送法三条二項三号に定める一般乗用旅客自動車運送事業である一人一車制の個人タクシー事業の免許にあたり、多数の申請人のうちから少数特定の者を具体的個別的事実関係に基づき選択してその免許申請の許否を決しようとするときには、同法六条の規定の趣旨にそう具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に適用すべく、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するものである等の場合は、右基準の適用上必要とされる事項について聴聞その他適切な方法により申請人に対しその主張と証拠提出の機会を与えるべきであり、これに反する審査手続により免許申請を却下したときは、公正な手続によつて免許申請の許否につき判定を受けるべき申請人の法的利益を侵害したものとして、右却下処分は違法となるものと解すべきである。
個人タクシー事業の免許申請の審査と公正手続
道路運送法3条2項3号,道路運送法6条1項,道路運送法122条の2
判旨
行政庁が多数の申請から少数の免許者を選択する場合、審査基準が微妙・高度な認定を要する内容であれば、申請人に対し主張と証拠提出の機会を与えなければならない。これに反する不公正な手続による却下処分は、適正な手続により判定を受ける法的利益を侵害するものとして違法となる。
問題の所在(論点)
法律に詳細な手続規定がない場合であっても、行政庁が内部的な審査基準に基づいて免許の拒否を行うに際し、申請人に対して主張・立証の機会を与えるべき手続的義務を負うか。また、その違反が処分の違法事由となるか。
規範
行政庁が具体的個別的事実に基づき選択的に免許の許否を決する場合、行政庁の独断を疑われるような不公正な手続をとってはならない。法律の免許基準を具体化した審査基準の内容が、微妙または高度な認定を要するものである場合には、当該基準を適用する上で必要な事項について、申請人に対しその主張と証拠提出の機会を与えるべきである。申請人は、このような公正な手続により判定を受ける法的利益を有し、これに反する審査手続による却下処分は違法事由を構成する。
重要事実
上告人(行政庁)は、個人タクシー事業の免許申請に対し、内部的な審査基準を設定して聴聞を実施した。被上告人は免許を申請したが、軍隊での運転経歴が「運転歴」に含まれるか、また洋品店の自営が「転業困難」に当たるかという点について、担当官が具体的な審査基準の内容を把握していなかったため、聴聞の場で主張や証拠提出の機会を与えられないまま、当該基準を充足しないとして申請を却下された。
あてはめ
本件審査基準のうち「他業関係」や「運転歴」に関する事項は、免許の許否を決める上で重要かつ微妙な認定を要するものであり、申請者の財産や経歴に直接関係する。しかし、実際の聴聞では担当官が基準を熟知せず、被上告人に対し軍歴や転業の意思等について何ら聴聞を行わなかった。仮に主張・立証の機会が与えられていれば、行政庁が異なる判断に到達した可能性を否定できず、手続の不公正さが認められる。これは、適正な手続により判定を受けるという被上告人の法的利益を侵害するものである。
結論
本件却下処分には手続上の瑕疵があり違法であるため、取り消されるべきである。
実務上の射程
行政手続法制定前の判例であるが、裁量権の行使における手続的正義(適正手続)の要請を認めた重要な先例である。答案上は、理由提示や聴聞手続の不備が裁量権の逸脱・濫用を導く際の論理として、または「適正な手続を享受する法的利益」の侵害を理由とする取消事由の構成に活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)490 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が運転免許の停止処分を行う際、その理由が過失による交通事故および報告義務違反等の複数の法令違反に基づくものであるならば、当該処分は処分基準(総理府令)に抵触せず、適法である。 第1 事案の概要:上告人は、自動車の運転中に過失により交通事故を起こし、他人に傷害を与えた。また、事故発生後にその内…
事件番号: 昭和42(行ツ)84 / 裁判年月日: 昭和50年5月29日 / 結論: 棄却
一、一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し運輸審議会の公聴会が開催された場合には、陸運局長の聴聞手続の瑕疵は、免許の許否に関する運輸大臣の処分の適法性に影響を与えない。 二、諮問の経由を必要とする行政処分が諮問を経てされた場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどによりその決定…