固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日におけるゴルフ場用地(ゴルフ場の用に供する一団の土地)の価格について、固定資産評価審査委員会が、当該ゴルフ場用地の取得価額の評定に当たり用いた方法との整合性の観点から、必要な土工事の程度を考慮することなく当該ゴルフ場用地の造成費を評定し得るとの見解に立脚して審査の申出を棄却する旨の審査の決定をした場合において、次の⑴、⑵など判示の事情の下では、上記見解に立脚して固定資産評価基準の解釈適用を誤ったことについて、上記委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断には、国家賠償法1条1項の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 固定資産評価基準は、ゴルフ場用地の評価について、大要、当該ゴルフ場用地の取得価額に当該ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準とする方法によるものとするとした上で、当該ゴルフ場用地の造成費が不明であるなどの場合には、当該造成費に代えて、最近における造成費から評定した価額によるものとする旨を定めている。 ⑵ 固定資産評価基準において、ゴルフ場用地の取得価額と造成費は、別個に評定すべきものとされており、同基準の具体的な取扱いを示した自治省ないし総務省の通知等にも、取得価額の評定の方法に応じて造成費の評定の方法が直ちに決まることをうかがわせる記述はみられず、ほかに、上記見解に沿う先例や文献等の存在もうかがわれない。
固定資産課税台帳に登録された土地の価格についての審査の申出を棄却する旨の審査の決定をした固定資産評価審査委員会の委員に職務上の注意義務違反が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例
国家賠償法1条1項、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)第1章第10節二
判旨
固定資産評価審査委員会が評価基準の解釈を誤り過大な価格を是認した際、相当の根拠なく、工事の程度という造成費の本質的要素を無視した判断をした場合には、委員に職務上の注意義務違反が認められ、国家賠償法上の違法性が認められる。
問題の所在(論点)
評価基準の解釈適用を誤って過大な登録価格を是認した審査決定について、国家賠償法1条1項にいう違法性が認められるための要件、および本件のように「取得価額の算定方式との整合性」を理由に実際の造成実態を無視した判断に注意義務違反が認められるか。
規範
固定資産評価審査委員会の決定が評価基準の解釈適用を誤り、過大な価格を是認した場合であっても、直ちに国家賠償法1条1項の違法となるわけではない。しかし、委員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認められる場合には、同項の違法性が認められる。造成費の評定において、必要な工事の程度に応じた評定を予定する評価基準の趣旨に反し、相当の根拠なく他の要素との整合性のみを理由に判断することは、この注意義務違反を構成し得る。
事件番号: 令和2(行ヒ)323 / 裁判年月日: 令和4年3月3日 / 結論: 破棄差戻
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日におけるゴルフ場用地(ゴルフ場の用に供する一団の土地)の価格について,同期日において当該ゴルフ場用地の周辺の土地は工場等の敷地となっていたという事実関係の下では,当該ゴルフ場用地の取得価額を附近の土地の価額から評定するに当たり,当該ゴルフ場用地の造成前の状態である塩田跡…
重要事実
ゴルフ場用地(本件各土地)の固定資産税評価において、丹波市長は山林比準方式で取得価額を算定し、造成費については丘陵コースの平均的造成費を採用した。しかし、本件各土地は元々平坦な地形で土工事をほとんど要しない林間コースに近い実態があった。評価審査委員会は、取得価額の算定方式(山林比準)との整合性を優先し、実際の土工事の程度を考慮せずに丘陵コースの単価を維持する決定(本件決定)を行った。納税者は、この決定が評価基準に違反し過大であるとして、決定の取消しと国家賠償を求めた。
あてはめ
評価基準によれば、造成費は実際の工事の程度に応じた評定が予定されており、取得価額とは別個に評定すべきものである。ゴルフ場通知等の資料でも、取得価額の算定方法が直ちに造成費の算定方法を決定付けるとする根拠はない。本件委員会は、本件各土地の土工事の程度を考慮すれば林間コースの単価を用いる余地を認めながら、合理的な根拠なく「整合性」のみを理由に高額な単価を維持した。これは、評価基準の趣旨を看過し、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさずに漫然と判断したものといえる。
結論
本件委員会の判断には、国家賠償法1条1項の違法性が認められる余地がある。原審が注意義務違反を否定して損害賠償請求を棄却した判断には法令の違反があるため、当該部分を破棄し差し戻す。
実務上の射程
専門的知見に基づく行政委員会の判断であっても、評価基準の客観的趣旨から逸脱し、先例や文献等の根拠なく独自の解釈で事実上の重要要素を無視した場合には、国賠法上の注意義務違反が肯定されやすい。税務訴訟において取消訴訟と国賠請求を併記する際の有力な指針となる。
事件番号: 平成24(行ヒ)79 / 裁判年月日: 平成25年7月12日 / 結論: 破棄差戻
1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録された価格の決定は違法となる。 2 評価対象の土地に適用される固定資産評価基準の定める評価方法が…
事件番号: 平成28(行ヒ)406 / 裁判年月日: 平成30年7月17日 / 結論: 破棄差戻
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格について,当該土地に接する街路が建築基準法42条1項3号所定の道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,上記街路が同号所定の道路に該当する旨の市長の判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために当該土地上に建…
事件番号: 平成11(行ヒ)182 / 裁判年月日: 平成15年7月18日 / 結論: 破棄差戻
固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成10年自治省告示第87号による改正前のもの)が定める標準家屋の再建築費評点数に比準して家屋の再建築費評点数を付設する方法及び同評点数に乗ずべき経過年数に応ずる減点補正率並びに同基準に基づいて自治大臣が指示した評点1点当たりの価額に一般的な合理性があるという事情の下に…
事件番号: 平成14(行ヒ)181 / 裁判年月日: 平成17年7月11日 / 結論: その他
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格についての固定資産評価審査委員会の決定の取消訴訟において,裁判所が,同期日における当該土地の適正な時価又は固定資産評価基準によって決定される価格を認定し,同委員会の認定した価格が上記の適正な時価等を上回っていることを理由として同決定を取り消す場合には,…