インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がされた場合に、上記の逮捕の事実が、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものであったとしても、次の⑴~⑷など判示の事情の下においては、上記の者の上記逮捕の事実を公表されない法的利益が上記メッセージを一般の閲覧に供し続ける理由に優越すると認められ、上記の者は、上記情報ネットワークの運営者に対し、上記メッセージの削除を求めることができる。 ⑴ 上記逮捕から約8年が経過し、上記の者が受けた罰金刑の言渡しはその効力を失っており、上記メッセージに転載された上記逮捕の事実の報道記事も報道機関のウェブサイトにおいて既に削除されている。 ⑵ 上記メッセージは、上記情報ネットワークの利用者に対して上記逮捕の事実を速報することを目的として投稿されたものとうかがわれ、長期間にわたって閲覧され続けることを想定して投稿されたものであるとは認め難い。 ⑶ 上記の者の氏名を条件として上記情報ネットワーク上を検索すると検索結果として上記メッセージが表示される。 ⑷ 上記の者は、公的立場にある者ではない。 (補足意見がある。)
インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいてある者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージが投稿された場合にその者が上記情報ネットワークの運営者に対して上記メッセージの削除を求めることができるとされた事例
民法2条、民法198条、民法199条
判旨
ツイッターへの投稿によりプライバシーを侵害された者が、人格権に基づき削除を求めることができるかは、事実の性質、伝達範囲、被害程度、社会的地位、投稿の目的、時間的経過等の諸事情を比較衡量し、公表されない法的利益が閲覧に供し続ける理由に優越する場合に認められる。
問題の所在(論点)
ツイッターの投稿記事(ツイート)が個人のプライバシーを侵害している場合、人格権に基づき削除を求めることができるか。また、その判断において検索サイトの検索結果削除の場合と同様に「法的利益の優越が明らか」であることを要するか。
規範
プライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は法的保護の対象であり、人格権に基づき侵害行為の差止め(削除)を求めることができる。その可否は、①事実の性質及び内容、②伝達される範囲と具体的被害の程度、③本人の社会的地位や影響力、④投稿の目的や意義、⑤投稿時の社会的状況とその後の変化等の諸事情を比較衡量し、公表されない法的利益が、情報を一般の閲覧に供し続ける理由に優越するか否かによって判断する。なお、検索結果の削除(検索事業者への請求)の場合とは異なり、削除が認められるために「法的利益の優越が明らか」であることまでは要しない。
事件番号: 平成28(許)45 / 裁判年月日: 平成29年1月31日 / 結論: 棄却
利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供する事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果の一部…
重要事実
上告人(原告)は平成24年、建造物侵入罪で逮捕され罰金刑に処された。その際、氏名不詳者らがツイッター上で報道記事を転載し、本件事実を摘示する投稿(本件各ツイート)を行った。約8年が経過し、刑の言渡しは効力を失い、元記事も削除されたが、ツイッター上で氏名を検索すると本件各ツイートが表示される状態が続いていた。上告人は現在、父の事業を手伝うなど公的地位にない生活を送っており、配偶者にも本件事実を秘匿していたため、人格権に基づき削除を求めた。
あてはめ
本件事実はプライバシーに属するが、逮捕当時は公共の利害に関する事実であった。しかし、①逮捕から約8年が経過し、刑の言渡しの効力が消滅(刑法34条の2第1項)しており、公共の利害との関わりは小さくなっている。②本件各ツイートは140文字の制限下での速報を目的としており、長期間の閲覧を想定したものではない。③上告人は公的立場にない一私人である。④一方で、氏名検索により知人に伝達される可能性は否定できず、更生を妨げない利益は重大である。これらを比較衡量すると、公表されない法的利益が閲覧を継続する理由に優越するといえる。
結論
上告人の本件事実を公表されない法的利益が、本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越するため、人格権に基づき本件各ツイートの削除を求めることができる。
実務上の射程
SNS運営者に対する直接の削除請求は、検索事業者に対する検索結果削除請求(最決平29.1.31)に比べ、削除のハードルが低い(「明らかに優越」までは不要)ことを示した。一度拡散された情報の「忘れられる権利」に近い議論において、時間的経過による公共性の減退を重視した判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成30(受)1412 / 裁判年月日: 令和2年7月21日 / 結論: 棄却
1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない。 2 インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウ…
事件番号: 平成22(受)2187 / 裁判年月日: 平成24年1月17日 / 結論: その他
マンションの区分所有者が,業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し,マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は,それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので,それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が…