インターネット上のウェブサイトに掲載された記事が,それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものではなく,会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取 引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示す るものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では,その記事を掲載した行為は,上記の会社及び従業員の名誉を毀損するものとして不法行為を構成する。
インターネット上のウェブサイトに記事を掲載した行為が名誉毀損の不法行為を構成するとされた事例
民法709条,民法710条
判旨
インターネット上の記事が他人の社会的評価を低下させるか否かは一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきであり、事実摘示と法的評価が組み合わさった記載は全体として社会的評価を低下させ得るとした。
問題の所在(論点)
事実の摘示と法的意見の表明が混在する表現において、名誉毀損における「社会的評価の低下」の有無をいかなる基準で判断すべきか。また、インターネット上の記事特有の考慮が必要か。
規範
ある記事が他人の社会的評価を低下させるか否かは、「一般の読者の普通の注意と読み方」を基準として判断すべきである。事実の摘示(第1文)とそれに対する法的評価(第2文)が組み合わさっている場合、それらがあいままって特定の事実を摘示するものと理解されるときは、名誉毀損における事実の摘示に該当し、社会的評価を低下させるものと解される。
重要事実
フリージャーナリストの被告が、新聞社である原告らの従業員が販売店からチラシを無断で持ち去り、それが「窃盗に該当する」旨の記事をウェブサイトに掲載した。しかし実際には、チラシを持ち帰ったのは別会社の従業員であり、かつ店主の了解を得た正当な行為であった。原告らは名誉毀損に基づく損害賠償を求めたが、原審は「窃盗」との記載は誇張された法的評価であり、社会的評価を低下させないとして請求を棄却した。
あてはめ
本件記事はウェブサイト掲載だが、一般の閲覧者が信用性を有しないと認識するような性質のものではない。記事の第1文(持ち去り)と第2文(窃盗に該当)があいまって、原告らが販売店主の了解なくチラシを持ち去ったという「事実」を摘示するものと理解されるのが通常である。この摘示事実は真実ではなく、被告は真実と信じるにつき相当な理由も主張していない。したがって、原告らの社会的評価を低下させ、不法行為を構成する。
結論
被告による記事の掲載は、原告らの社会的評価を低下させる事実の摘示に該当し、不法行為を構成する。原判決を破棄し、損害額の審理のため差し戻す。
実務上の射程
インターネット上の表現であっても、直ちに信頼性が低いと擬制せず、一般読者の基準(昭和31年判例)を維持した点に意義がある。「事実」か「意見・論評」かの区別において、文脈全体から「事実の摘示」と評価される範囲を広く認めており、被告側の「単なる法的評価(意見)である」という抗弁を封じる際の有力な根拠となる。
事件番号: 平成8(オ)852 / 裁判年月日: 平成14年3月8日 / 結論: 破棄差戻
判示の事実関係の下においては,新聞に掲載された記事が一般的には定評があるとされる通信社から配信された記事に基づくものであるという理由によっては,新聞社において配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについての相当の理由があったと認めることはできない。 (意見及び反対意見がある。)