新聞の編集方針、その主な読者の構成及びこれらに基づく当該新聞の性質についての社会の一般的な評価は、当該新聞に掲載された記事による名誉殿損の成否を左右しない。
特定の新聞の性質についての社会の一般的な評価等と当該新聞の記事による名誉殿損の成否
民法709条,民法710条
判旨
名誉毀損の成否は、一般読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきであり、新聞の編集方針や読者層の性質、当該新聞の社会的評価といった事情によって不法行為責任の成否が左右されることはない。
問題の所在(論点)
不法行為法上の名誉毀損(民法709条)の成否を判断するにあたり、掲載媒体(新聞)の編集方針や読者層の性質を考慮して、社会的評価の低下の有無を判断することができるか。
規範
ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。たとえ新聞が主に興味本位の記事を掲載する編集方針であっても、報道媒体としての性格を有する以上、読者は記事に幾分かの真実が含まれていると考えるのが通常であり、当該記事により社会的評価が低下させられる危険性が生じることを否定できない。
重要事実
夕刊紙「夕刊D」が、殺人未遂等で有罪判決や捜査を受けていた上告人に関し、推理小説作家の「事件は保険金目当てのグループによる犯行で、上告人は主犯ではないが、別件では主犯としてやった事件があるはずだ」等の談話を「爆弾発言におびえる黒い連中の影」等の見出しと共に掲載した。原審は、当該新聞が興味本位の編集方針であり、一般読者も推理にすぎないと受け取るため、社会的評価を低下させないとして名誉毀損の成立を否定した。
あてはめ
本件記事は、上告人が殺人事件の主犯である可能性を示唆する内容を含んでいる。原審は、夕刊D紙が会社員等を対象に興味本位の記事を掲載する媒体であることを重視し、読者が新たな興味本位の記事の一つとして受け取ったにすぎないと判断した。しかし、報道媒体である以上、読者は記事内容に従って評価を下す危険がある。したがって、媒体の性質を理由に名誉毀損の成立を否定した原審の判断は、名誉毀損の判断基準を誤ったものである。
結論
新聞の編集方針や読者の構成を理由に不法行為責任の成否を左右することは認められない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
名誉毀損における「社会的評価の低下」の判断枠組みを示す重要判例。ゴシップ紙やタブロイド誌、SNS上の投稿など、信頼性が低いとされる媒体であっても、直ちに名誉毀損が否定されるわけではないことを示す際に用いる。答案上は、媒体の性格を考慮して「低下なし」とする反論を封じる論理として活用できる。
事件番号: 平成8(オ)220 / 裁判年月日: 平成9年5月27日 / 結論: 破棄差戻
一 新聞記事による名誉段損にあっては、これを掲載した新聞が発行され、読者がこれを閲読し得る状態になった時点で、右記事により事実を摘示された人が当該記事の掲載を知ったかどうかにかかわらず、損害が発生する。 二 名誉殿損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたことは、これにより損害が消滅したものとして既に生じている名…