利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供する事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果の一部として提供する行為の違法性の有無について,当該事実の性質及び内容,当該URL等が提供されることによって当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断し,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,上記の者は,上記事業者に対し,当該URL等を検索結果から削除することを求めることができる。
検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合
民法2条,民法198条,民法199条
判旨
検索事業者が提供する検索結果に個人のプライバシーに属する事実を含むURL等が含まれる場合、当該事実を公表されない法的利益が、検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して明らかに優越するときに限り、削除を求めることができる。
問題の所在(論点)
検索事業者が提供する検索結果により個人のプライバシーが侵害される場合において、人格権に基づく検索結果の削除請求が認められるための判断枠組み、および本件逮捕事実の公表されない利益が削除を認めるべき程度に達しているか。
規範
検索事業者による検索結果の提供は、情報の収集・整理・提供の方針に沿った表現行為としての側面を有し、現代社会の情報流通の基盤として重要な役割を担う。したがって、検索結果の削除が認められるためには、(1)当該事実の性質・内容、(2)伝達範囲と具体的被害の程度、(3)本人の社会的地位・影響力、(4)記事等の目的・意義、(5)掲載時の社会的状況と後の変化、(6)事実記載の必要性等の諸事情を比較衡量し、当該事実を公表されない法的利益が、検索結果として提供し続ける利益よりも「優越することが明らか」な場合であることを要する。
事件番号: 令和2(受)1442 / 裁判年月日: 令和4年6月24日 / 結論: 破棄自判
インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がされた場合に、上記の逮捕の事実が、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものであったとしても、…
重要事実
抗告人は平成23年、児童買春の容疑で逮捕され罰金刑に処せられた。この事実は当時報道され、ネット上の掲示板等に多数書き込まれた。相手方(Google)の検索エンジンで抗告人の居住地および氏名を検索すると、当該事実が掲載されたウェブサイトのURL、表題、抜粋(検索結果)が表示される状態にあったため、抗告人は人格権に基づき当該検索結果の削除を求める仮処分を申し立てた。
あてはめ
本件逮捕事実は他人に知られたくないプライバシーに属する事実である。しかし、児童買春は社会的に強い非難の対象であり、罰則をもって禁止されている重大な犯罪であることから、逮捕から約5年が経過した時点でもなお「公共の利害に関する事項」であるといえる。また、検索結果が表示されるのは特定の地域名と氏名を組み合わせた場合に限られており、伝達範囲は一定程度限定されている。抗告人が更生に努め、妻子と生活している事情を考慮しても、公表されない法的利益が検索を維持する利益に「優越することが明らか」とまではいえない。
結論
抗告人のプライバシー利益が検索結果を提供する理由に明らかに優越するとは認められないため、削除請求は認められない(抗告棄却)。
実務上の射程
プライバシーと表現の自由の衡量において、検索サイトの公共的役割を重視し、削除には「優越することが明らか」という高いハードルを課した点に意義がある。SNSの投稿削除など、検索事業者以外に対する削除請求においても比較衡量の手法は参照されるが、本枠組みは特に検索事業者の特質(情報流通の基盤性)に配慮したものである点に注意を要する。
事件番号: 平成26(行ヒ)75 / 裁判年月日: 平成27年4月28日 / 結論: 棄却
音楽著作権の管理事業を行う既存の事業者が,その管理する音楽著作物の放送への利用の包括的な許諾につき,ほとんど全ての放送事業者との間で年度ごとの放送事業収入に所定の率を乗じて得られる金額又は所定の金額による使用料の徴収方法を定める利用許諾契約を締結しこれに基づくその徴収をする行為は,次の(1)~(3)など判示の事情の下で…
事件番号: 平成27(し)401 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】刑事確定訴訟記録法4条2項5号の閲覧制限事由の該否は、当該情報を公開することで関係人の名誉や生活の平穏を著しく害するおそれがあるか、及び裁判の公正を担保するために公開が必要な範囲を総合的に判断して決定すべきである。 第1 事案の概要:閲覧請求人は、放射性物質に汚染された木材チップの廃棄事件(廃棄物…
事件番号: 平成20(し)30 / 裁判年月日: 平成20年6月24日 / 結論: 棄却
1 訴訟関係人のする刑事確定訴訟記録法に基づく保管記録の閲覧請求であっても,関係人の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたなど,権利の濫用に当たる場合は許されない。 2 訴訟関係人がした関係者の身上,経歴等プライバシーに関する部分についての閲覧請求が,当該関係者の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされ…
事件番号: 平成24(許)41 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 棄却
監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の頻度等につき1箇月に2回,土曜日又は日曜日に1回につき6時間とする旨定められているが,子の引渡しの方法については何ら定められていないなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付が十分に特定されているとはいえず,上記審判に基づ…