検察官のした廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分を取り消し,原発事故により放出された放射性物質で汚染された木くずの移動経路,搬入先等を記載した捜査報告書の一部閲覧を命じた原決定について,刑事確定訴訟記録法4条2項5号の解釈適用を誤った違法があるとして,その一部が取り消された事例
刑事確定訴訟記録法4条1項,刑事確定訴訟記録法4条2項,刑事確定訴訟記録法8条,刑訴法411条1号,刑訴法426条,刑訴法434条
判旨
刑事確定訴訟記録法4条2項5号の閲覧制限事由の該否は、当該情報を公開することで関係人の名誉や生活の平穏を著しく害するおそれがあるか、及び裁判の公正を担保するために公開が必要な範囲を総合的に判断して決定すべきである。
問題の所在(論点)
刑事確定訴訟記録法4条2項5号に基づき、汚染木くずの移動経路、取扱業者名、搬入先等の情報を不許可とした保管検察官の処分が正当といえるか。また、閲覧請求人が同法4条2項ただし書の「正当な理由があると認められる者」に該当するか。
規範
刑事確定訴訟記録の保管検察官は、記録の閲覧により「関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがある」ときは、閲覧をさせないことができる(刑事確定訴訟記録法4条2項5号)。この該否は、対象情報の性質、閲覧による弊害の程度、閲覧請求者の主観的意図や正当な理由の有無、及び公開による司法制度への信頼確保という趣旨を考慮して判断される。
重要事実
閲覧請求人は、放射性物質に汚染された木材チップの廃棄事件(廃棄物処理法違反)に関し、裁判記録のうち、木くずの移動経路や保管状況がわかる供述調書・報告書等の閲覧を求めた。原審(準抗告審)は、一部の固有名詞を除き、移動経路に関する取扱業者名や土地所有者名、搬入先の市町村名までの情報の閲覧を認めた。これに対し検察官が、風評被害等のおそれを理由に特別抗告を申し立てた。
事件番号: 平成27(し)428 / 裁判年月日: 平成27年10月27日 / 結論: 棄却
刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書,刑訴法53条1項ただし書にいう「検察庁の事務に支障のあるとき」には,保管記録を請求者に閲覧させることによって,その保管記録に係る事件と関連する他の事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合が含まれる。
あてはめ
本件情報の閲覧を認めると、木くずの取扱業者、移動経路、搬入先の土地所有者等が特定されることになり、これに伴う風評被害や回復し難い経済的損害が発生し、関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれが認められる。閲覧請求人自身が請求の範囲を「プライバシーに関する部分は除く」としていたこと、また、裁判の公正を担保するためには、市町村名までの詳細な閲覧を認めずとも十分であることを考慮すれば、当該部分は同法4条2項5号の制限事由に該当する。また、請求人は被告事件の告発人であるが、市民グループの代表として知る権利等を主張するにとどまり、訴訟関係人や正当な理由がある者にも当たらない。
結論
本件閲覧許可部分のうち、移動経路や搬入先の詳細な名称・住所等を含む部分は閲覧制限事由に該当し、不許可とした検察官の判断は正当である。原決定のうち、当該部分の閲覧を認めた部分は取り消されるべきである。
実務上の射程
刑事確定訴訟記録の閲覧につき、プライバシー保護や風評被害防止の観点から制限事由を肯定した。また、告発人や市民団体代表という立場のみでは、原則公開の例外である「正当な理由がある者」としての優先的な閲覧権を基礎づけないことを示した。
事件番号: 平成24(し)25 / 裁判年月日: 平成24年6月28日 / 結論: その他
刑事確定訴訟記録法に基づく判決書の閲覧請求について,「プライバシー部分を除く」とする限定の趣旨を申立人に確認することなく,閲覧の範囲を検討しないまま,民事裁判においてその内容が明らかにされるおそれがあるというだけの理由で同法4条2項4号及び5号の閲覧制限事由に該当するとして判決書全部の閲覧を不許可とした保管検察官の処分…
事件番号: 平成20(し)30 / 裁判年月日: 平成20年6月24日 / 結論: 棄却
1 訴訟関係人のする刑事確定訴訟記録法に基づく保管記録の閲覧請求であっても,関係人の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたなど,権利の濫用に当たる場合は許されない。 2 訴訟関係人がした関係者の身上,経歴等プライバシーに関する部分についての閲覧請求が,当該関係者の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされ…
事件番号: 平成4(し)114 / 裁判年月日: 平成4年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法82条2項但書は、刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまでを認めたものではない。したがって、閲覧の制限を定めた刑事確定訴訟記録法等の規定は同条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人が、刑事確定訴訟記録法4条2項及び刑事訴訟法53条3項に基づき刑事確定訴訟記録の閲覧を求めたが、認め…
事件番号: 平成13(し)299 / 裁判年月日: 平成14年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事確定訴訟記録法に基づき検察官が行う記録の閲覧等に関する処分は、同法8条1項にいう「閲覧に関する処分」に該当しないため、刑事訴訟法430条1項による準抗告の対象とならない。 第1 事案の概要:本件において、申立人は検察官に対し刑事確定訴訟記録の閲覧を求めたが、検察官はこれに対し何らかの拒否または…